大学の学びはこんなに面白い

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個々の研究はもちろん、グローカルな地域貢献活動や教育、共同研究という形でSDGsを達成していきたい

2019年2月27日掲出

応用生物学部 松井 徹 教授

松井 徹教授

 東京工科大学では、2015年に国連が採択した17のゴール、169のターゲットから成る持続可能な開発目標「SDGs(エス・ディ・ジーズ)」を意識した教育や研究を推進しています。今回は、応用生物学部での取り組みについて、松井先生にお聞きしました。

■応用生物学部では、SDGsをどのように捉えていますか?

 SDGsは、今、世界的に取り組まなければならないことだと認識されているものです。その内容をひとつ一つ見てみると、そこで掲げられている目標は、私たち応用生物学部(以下BS学部)が特に得意としているところだと言えます。例えばSDGsのNO.2「飢餓をゼロに」やNO.3「すべての人に健康と福祉を」は食糧や医療に関係するところです。また、複数掲げられている地球環境を維持していこうという目標は、まさにBS学部にある4コースすべてが網羅している分野になります。
 大学には、研究と教育という2つの役割があって、まずBS学部の個々の先生方のご研究を見てみると、やはり方向性としてSDGsに向かっていくものが非常に多いです。一例に過ぎませんが、例えば、植物バイオテクノロジーを専門とされている多田雄一先生が取り組んでいる「カリウム肥料利用効率改善」の研究は、SDGsのNO.2「飢餓をゼロに」に関連しますし、梶原一人先生の「食塩の有害性」、吉田亘先生の「簡易ガン診断法」、杉山友康先生の「六価クロム浄化」の研究はNO.3「すべての人に健康と福祉を」に関連するものです。また、浦瀬太郎先生の「排水処理」の研究や私自身の「微生物による有機汚染化合物分解」の研究は、NO.6「安全な水とトイレを世界中に」に関わるものです。他にも本学部で取り組んでいる研究には、SDGs目標に関連するものが多数あります。

■では、教育面ではどのような取り組みが挙げられますか。

 例えば、2018年に1年生を対象にした環境系サークルを私が中心となってつくり、活動を始めました。BS学部に入学してくる学生は、もともと環境に興味を持って入ってくる人が非常に多いのですが、入学したばかりでは、何を学びたいのか、研究したいのかということまでは、はっきりしていません。漠然とボランティアをしてみたい、環境を意識した行動をしたいということはありますが、具体的な行動に移せないことが多々あるのです。そこでサークルをつくって、地域貢献や環境に関われる活動を一緒に経験することで、学生のしたいことを具体的にしていこうと始動しました。

牧場見学

 最初の活動としては、八王子キャンパスの近くにある磯沼ミルクファームという牧場で牧場主に話を聞いたり、バターづくり体験をさせてもらったりしました。八王子市という都心に牧場があること自体、珍しいですし、そこでは牛やヤギを飼うだけでなく、八王子市に貢献するためにサイレージという牧草の漬物みたいなものをつくったり、生ごみを使ってコンポスト(堆肥)をつくったりされているので、そういう取り組みの話を伺いました。また、動物に触れる経験も学生には楽しかったようです。
 そのほか、地域貢献ということで、八王子市が開催している環境関係イベントのボランティアにも参加しました。八王子市北野余熱利用センターあったかホールで年2回開催されている「あったかホールまつり」のお手伝いです。現在はまだ非公認サークルなのですが、1年生の学生が30人ほど登録してくれていて、活動も盛んになってきているので、近いうちに公認サークルにしようと考えています。

■先生のご研究では、何かSDGsに結びつくような取り組みが始まっていますか?

松井 徹教授研究

 今、学内ではSDGsとグローカル(グローバル+ローカル)に関係する活動を重視していて、国際協力や地球レベルでの活動、地域貢献の両方を進めていくことが求められています。やはり大学を中心にした地域連携は非常に大事ですからね。
 そういう流れの中で、まだ形になってはいませんが、八王子市のお手伝いができるかもしれない研究があります。八王子市は廃棄肥料への取り組みに積極的で、先ほど話したコンポスト、それから料理の廃油を使ってバイオディーゼルという燃料をつくる取り組みをしています。ただ、バイオディーゼルの問題点は、廃棄物が出ることです。グリセリンというドロッとした黒いモノが出てきて、それは燃やすくらいしか処理する方法がありません。しかし、私から見ると、それに使えそうな微生物がけっこうあって。例えば、その廃棄物に微生物を混ぜてみたら、バイオエタノールがつくれるかもしれません。ですから八王子市環境区ゴミ減量対策課に話を持って行って、研究資料としてバイオディーゼルの廃棄物をわけていただいて、研究を始めています。また、それと並行して国際協力や国際貢献、海外の大学との共同研究にも力を入れていくつもりです。
 学部全体としては、ここ2年で微生物研究の先生が増えました。中西昭仁先生、西野智彦先生、野嶽勇一先生、筒井裕文先生です。微生物は、病原菌を退治するという研究もありますが、それを産業に活かそうという方向で研究している先生もいらっしゃいます。私は生命科学・環境コースの環境分野ですが、新しく入った先生方はそれぞれ違うコースです。微生物の活かし方が違うからコースが違うのですが、出口が違うだけで、考えていることは似ている場合もあるので、そういう先生方と横のつながりを持って、共同研究ができたらと思っています。一人ではできないことも、できるのではないかと思いますから。こうしたこともSDGsを見据えた取り組みだと言えると思います。

■前回は3年前に取材させていただきましたが、その後の先生のご研究についてお聞かせください。

 今は、色んな微生物を採取してきて、集める方に力を入れています。方向性も以前は環境浄化というテーマで進めていましたが、今はたくさん微生物を集めて、それらを使って環境だけでなく食品や化粧品など、色んなことに活用してみたいと思っています。ここ1年ほどは、機能性食品に使えるような微生物の研究にも取り組んでいます。あとは農薬や化粧品の成分に使えるものなども探しています。そのためには、とにかく新しい微生物を見つけることが大事で、それが私たち研究室の使命になっています。ですからキャンパス内はもちろん、高尾山など色々なところへ行って、微生物を探しています。新種はまだ見つかっていませんが、いずれ見つかると期待しています。

■最後に受験生・高校生へメッセージをお願いします。

 色々なことにチャレンジしてください。失敗することもあると思いますが、それを恐れずに。失敗したら、またやり直せばよいのですから。そういうことを繰り返すうちに、自分が成長していきます。ありきたりかもしれませんが、失敗のないところに成長はないのです。 また、今はSDGsという目標が世界的に掲げられているので、日本だけでなく世界に目を向けて、他国の現状や取り組みにも興味を持ってほしいですね。それが自分の研究や成長に繋がるかもしれませんよ。

・次回は3月8日に配信予定です