大学の学びはこんなに面白い

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ICTの技術的な価値創造を目指す学びとは?

2023年8月29日掲出

コンピュータサイエンス学部 先進情報専攻 青木輝勝 教授

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コンピュータサイエンス学部では、来年4月から先進情報専攻と社会情報専攻の新たな2専攻制が始まります。今回は先進情報専攻の詳細について、青木先生にお聞きしました。

■来年度から始まるコンピュータサイエンス学部の先進情報専攻について教えてください。

 先進情報専攻は、ICT分野の新たな技術開発に主眼を置き、技術的な価値の創造を目指す専攻です。入試でこの専攻を選んだ学生は、2年生で情報基盤コース、人間情報コース、人工知能コースの3つから自分が探究したいものを選択し、それぞれに分かれて学びます。

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 今回の改変の背景から話すと、4年ほど前から今年度まで、コンピュータサイエンス学部(以下、CS学部)は、人工知能専攻と先進情報専攻の2専攻に分かれていました。それを今回、人工知能を先進情報に吸収し、新たに社会情報専攻を設ける形にします。というのも4年前は、ちょうど人工知能が発展し始めた時期でした。そこで専攻も、人工知能とその他の技術に分けたのです。しかし、ここ数年で人工知能は恐ろしいほど発達し、もはや社会基盤の一つと言えるまでに成長しました。もちろん、今後も人工知能は成長していく分野ですが、成熟期に入ったと言えます。また、本学部で言えば、以前の先進情報専攻に分類されていた先生方が自身の専門分野と人工知能とを結び付けた研究を始めるケースも増えてきました。例えばネットワーク技術と人工知能、あるいはセキュリティ技術と人工知能というように。ですから、改めて専攻のあり方を整理し直し、今回の形になったと言えます。
 一方、現在はDX(デジタルトランスフォーメーション)が、とても注目を集めています。そこでDX分野を分離し、社会情報専攻として独立させました。

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■では、先進情報専攻の3つのコースについて教えてください。

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情報基盤コース

 先ほど、お話ししたように、先進情報専攻の学生は2年生で、情報基盤コース、人間情報コース、人工知能コースのいずれかを選択します。各コースの学びについて説明しましょう。まず、情報基盤コースでは、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、情報セキュリティを扱います。ご承知の通り、コンピュータにはハードウェア本体と、そこに載るソフト、そしてネットワークが必要です。今時、ネットワークにつなげないと何もできませんからね。さらに、もう一つ大事なものが、情報セキュリティです。これら4つの性能を上げる、つまりインターネットを速くする、セキュリティを強くする、コンピュータのプログラムが簡単に書けるようにする、あるいは早く実行できるようにすることを目的に学ぶのが情報基盤コースです。ただし、ハードウェアに関しては、それほど対象とはなりません。というのもハードウェアは、どちらかというと半導体や電子回路といった工学部で扱う分野になるからです。ですから4つの内、主にソフトウェア、ネットワーク、セキュリティの3つをメインに学び、その性能を上げること、そしてハードウェアの原理をよく理解した上で大規模コンピュータ(クラウド)を速く動かすことを目指すコースです。

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人間情報コース

 人間情報コースでは、コンピュータとそれを使う人間との関わりを見直すことで、新しい使い方などを研究していきます。コンピュータが速く処理できるようになったけれど、人間側からするとそれの何が嬉しいことなのかと疑問がわくでしょう。そこで人間情報コースでは、コンピュータで速い処理ができるのなら、例えば、もっと分かりやすい表示方法や新しい使い方ができるだろうと考え、研究していくイメージです。実際に人間が使う側の視点で研究するので、ユーザビリティやUX(ユーザーエクスペリエンス)が関係する部分になります。
 具体的にこのコースで扱うのは、音声処理・画像処理、人間工学、認知科学、メタバースです。この中で認知科学だけ、少し毛色が違うように思いますので補足で説明しましょう。認知科学は、人間の脳の仕組みを知り、それをコンピュータに活かそうというもので、人工知能の基礎になるものです。人間の脳の処理の仕方はもとより、動物や昆虫に学ぼうというものもあります。例えば、コンピュータで画像を処理するときに、今はカメラで撮ったもの、つまり人間が見ているものと同じものをコンピュータに入力していますが、もしかすると、虫の複眼で捉えた情報の方がコンピュータは処理しやすいという可能性もあります。そういう意味では、広く生物に学び、応用する試みが、認知科学だと言えます。そういうものもこのコースで扱う分野になります。

corse03.jpg 人工知能コース

 人工知能コースで扱うのは、機械学習・自動運転・知能ロボット・生成系AIです。機械学習は、人工知能そのものです。自動運転は、人工知能が発展して、産業的に最もインパクトのある応用になるものだと言われています。自動車産業は裾野も広いので、AI技術の影響が一番大きい産業と言えるからです。とはいえ現状の自動運転は、目指している自動運転にはほど遠いものです。完全に運転を任せられ、本当に安全というところにまで行き着くには、まだまだ研究すべきことがたくさんあり、技術としてももっと上を目指していかなければなりません。
 知能ロボットは、簡単に言うと鉄腕アトムやドラえもんを作りましょうという、昔からの人々の夢に近づく研究のことです。
 また、人工知能には、色々な側面があります。まず世の中を便利にする面がある一方で、非常に怖い面もあります。よくChatGPTは嘘をつくと言われていますが、その使い方にも注意が必要です。例えば、就職活動のエントリーシート。あまり文章力に自信がない学生さんにとっては、確かに自分で書くよりもChatGPTに書かせた方が、質の高い文章が書けるかもしれません。しかし、それではその人を正しく評価することができません。授業のレポートなども、課題によってはChatGPTに入れれば、簡単に答えが出てきます。しかもChatGPTは、質問の仕方を少し変えるだけで答えも変わってくるので、教員側もそれがChatGPTの文章なのか学生の書いたものなのか、判断することは非常に困難です。そのような使い方をすれば、教育が崩壊する可能性があります。ですから、ChatGPTでつくったものかどうかを見分けられるような仕組みや技術が必要です。これはあらゆる分野に言えることで、例えばデザイン分野でも、今では人工知能が勝手に学習して、新しい画像を作ってくれるため、それを課題に使われると評価ができなくなります。このように、教育と人工知能との付き合い方には、課題がたくさんあり、それらをどう乗り越えるかについて研究していこうということで、生成系AIも扱う対象としています。

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 教員もこれら3コースに分かれてはいますが、多かれ少なかれ、分野が重複している部分があります。私の例で言うと、画像系の人工知能を研究テーマにしていますが、分野としては80%が人工知能コース、20%が人間情報コースというような研究分野のイメージです。ですから、それぞれのコースに教員が配属されてはいますが、多くはそのコース内だけにとどまらず、そこから少し分野が広がっている感じになります。ですからもし人工知能を学びたい学生が、情報基盤も気になっているという場合は、どちらか一方をあきらめる必要はなく、両方の分野にまたがるような研究室を見つけたり、情報基盤の授業を覗いたりしてみることもできるのです。ただし、研究室や演習・実習は、各コースに紐づいています。

■コースに分かれる前の1年生は、どんなことを学ぶのですか?

 1年生にとって特に重要な科目が、3つあります。ひとつが「コンピュータ概論」。これは、コンピュータの原理を知る授業です。そして「プログラミング基礎」。これはプログラミングの基礎を学ぶ科目で、どの分野・コースに進むにしても絶対に学ばなければならないものです。それから、CS学部の特徴的なものに「価値創造演習」があります。1年生の限られたプログラミングスキルでも、色々と頭を使って考えれば、新しいタイプの、世に役立つあるいは儲かるソフトウェアが作れるということを学ぶ演習です。
 まだ十分にプログラムも書けない1年生の段階で、そういうことができるのかという疑問があるかもしれませんが、本学部の姿勢として、社会とのつながりを考えて、常にプログラム技術とその応用の両輪で考えていくという特徴があります。コンピュータサイエンスは、社会と切り離されては、あまり意味がありません。ですから、プログラミングの力が未熟であっても、その時点でできることを考えようというのが、本学部の大きな特徴の一つだと言えます。

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 また、実際に就職してプログラムを書いている人に聞くと、結局、現場では高いプログラミングスキルよりも何を作るか、どのようにして設計するかを考えられる力の方がずっと大切だと言われます。企業視点では、プログラムをある程度は理解しながらも、さらにそれをどう応用するか、どう設計するかを考えられる人が重宝されるわけです。そういう力を1年生の段階から身に付け始められるカリキュラムになっています。

■今後の展望をお聞かせください。

 本学のCS学部は他大学の情報系学部に比べて、少し規模が大きいです。他大学の情報系学部が1学年で100人前後の規模であることが多いのに対し、本学部は1学年で約300人と、約3倍の差があります。私としては、その規模感をうまく活かしたいと思っています。例えば、本学部には大規模サーバーがあり、学生はそこでいつでも作ったプログラムを動かすことができます。そういう環境が整えられるのは、やはり学部の規模が大きいからです。

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Lyon (人工知能用サーバ)


 また、演習や実習が充実している点も、ある程度の規模感があるからできることです。例えば、1学年100人で50人ずつの演習をするとしたら、演習のテーマは2つしかできません。学生はその内のどちらか選ぶことになるわけですが、中にはどちらにも興味が持てないという学生もいることでしょう。しかし、1学年に300人いれば、50人ずつで演習する場合、6つに分けられるので、テーマも6つ用意できます。その内の1つぐらいは、学生の興味に該当するものがあるでしょう。それだけ選択肢を用意できるというメリットがあるのです。
 他にも、1学年の人数が多いと、自分とは異なるコースに友達がいる可能性が高くなり、他コースの情報がよくわかるという環境もつくれます。プログラム技術に強い人、ビジネスセンスの優れた人、海外情報に強い人というように、色々な強みを持つ人たちが、1つの学部に混在するダイバーシティのある環境は、教育の場として理想的です。

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 近年、少人数教育が良いとされていますが、それと今、私がお話しした規模を活かした教育とは、矛盾しません。大規模だからこそ環境を充実させることができ、教育面ではきめ細かく対応することができるからです。本学は少人数教育も充実していて、例えば、アドバイザー制度によって1~3年生までは担任の先生を設け、学修や学生生活のことなど、何かと担任に相談することができます。もちろん4年生になれば、所属研究室の先生がきめ細かく指導します。ですから、大規模の良さと小規模の良さを併せ持つという本学部の特徴を、うまく教育に活かしていきたいと考えています。

■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 私が大切だと思うのは、挨拶、英語、数学です。挨拶は自分の周りにいる身近な人ときちんとコミュニケーションを取ること。英語は、世界共通語を学んで世界の人と話すこと。そして、数学は機械や自然と話すことという意味です。数学は機械や自然と話をするため、あるいは機械や自然について他の人と話すときに必要な言語なのです。つまり学問の基本は、全て言語だと言えます。それらをきちんと学んでいると、大学で応用的なことを学ぶ際に、得られる情報や知識が多くなるので、学ぶことが一段と楽しくなるはずです。
 そういう意味で言えば、高校までの勉強は基本的なコミュニケーションの仕方を学んでいるわけですから、正直、面白いとは言い難いのかもしれません。何の役に立つのか、よく分からないまま勉強しているという面もあることでしょう。車の運転で例えるなら、高校時代は教習所でハンドルの扱い方を教わるなど、手順を学んでいる段階で、まだ実際に車で走ったことがないという状況です。逆に、その知識さえ習得できていれば、大学に入った後は、実践でどこへでも自由に、遠くまで運転して行けるはずです。ですから今は、例え面白みが感じられなくても、基礎的な勉強をぜひ頑張ってください。
■コンピュータサイエンス学部:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/cs/index.html