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化粧品原料「プラセンタエキス」の新たな活性成分を発見 メカニズム解明や機能性化粧品の創成に期待

2017年10月24日掲出

今村 亨教授

 東京工科大学(東京都八王子市片倉町、学長:軽部征夫)応用生物学部の今村 亨教授、伊藤航平修士課程学生、山田竜二修士課程学生、松本展希学部生らの研究グループは、化粧品原料に使われる「ブタプラセンタエキス」の活性メカニズムの解明につながる成分の存在を発見しました。
この研究成果は、2017年10月2日に米国の科学誌「Journal of Cosmetic Dermatology」電子早期版に掲載されました(注1)。

【背景】
 プラセンタ(胎盤)エキスは、化粧品やサプリメント、医薬品などに広く使われていますが、その活性発揮のメカニズムについては不明な点が多く残されていました。化粧品原料には、主にブタから調製したものが使われていますが、製造工程でタンパク質の酵素分解や加熱という過酷な処理を施されており、細胞の増殖分化や機能を制御する活性をもったシグナル分子(注2)が含まれていることを示した例はありませんでした。そこで本研究では、プラセンタエキスの有効性を明らかにするため、シグナル分子の一群である、FGF(線維芽細胞増殖因子)ファミリー(注3)の活性という観点から、検証を行いました。


図1:FGF受容体がプラセンタエキスで活性化される様子(モデル図)

【成果】
 研究では、シグナル分子群であるFGFファミリーに対する主要な受容体の活性化を解析できる細胞を複数種類作成。これらに対してブタプラセンタエキス(PPE)を加えると、増殖反応を通じて5種類(FGFR1c、FGFR2c、FGFR2b、FGFR3c、FGFR4)のFGF受容体(注4)について、活性化を示すことを発見しました。これらのFGF受容体が特異的に活性化されたことは、阻害物質によりプラセンタエキスの活性が阻害されたことで確認されました。また、プラセンタエキスには「グリコサミノグリカン」という糖鎖が含まれており、化粧品原料の製造工程においてFGF活性を保護していることも示唆されました(図1)。

【社会的・学術的なポイント】
 本研究により、プラセンタエキスにはFGF活性を発揮する物質が含まれており、さらにこの活性物質は、高分子量と低分子量の両方の分子量範囲に含まれていることが明らかになりました。組換えタンパク質として生産されている天然型FGF医薬品は、皮膚潰瘍や粘膜炎の治療、再生医療や美容皮膚科などの分野でその有効性が実証されています。化粧品原料としてのプラセンタエキスの有効性も、その一部はFGF活性によるものであることが本研究を通じて示唆されました。プラセンタエキスの新規活性成分が明らかになったことで、新たな機能性化粧品の創成が期待されます。

(注1)論文名「Evaluation of fibroblast growth factor activity exerted by placental extract used as a cosmetic ingredient」, DOI: 10.1111/jocd.12434

(注2) シグナル分子とは、ホルモンや細胞増殖因子など細胞間のシグナル伝達に関わる分子の総称で、特定の細胞に到達すると、その細胞の増殖や分化、機能などを調節する指令を出します。皮膚におけるシグナル分子は、皮膚の健常性の維持、創傷治癒、毛髪の成長の促進や休止の維持など、多面的な働きを示します。

(注3)FGFファミリーとは、遺伝子やタンパク質の構造が似通った分子群(ファミリー)の総称で、ヒトでは22種類の遺伝子があります。

(注4)受容体とは、細胞膜に存在してシグナル分子の到着を察知し、その情報を細胞内に伝える分子のことを指します。FGFファミリーに対応して、FGF受容体もファミリーを形成しており、ヒトでは4種類の遺伝子があり、7種類のFGF受容体をコードしています。

■東京工科大学応用生物学部 今村亨研究室(細胞制御)

[主な研究テーマ]
1. 健康な毛髪成長を制御する仕組みの研究
2. 毛髪成長を制御する物質の解明と創出
3. 健康な肌で働く細胞制御の仕組みの研究
4. 健康で若い肌を実現する物質の解明と創出
5. 細胞制御物質を活用した再生医療用分子や新規化粧品・医薬品の開発研究

【研究内容に関しての報道機関からのお問い合わせ先】
■東京工科大学 応用生物学部 今村 亨教授
Tel 042-637-2149(研究室直通)
E-mail imamurator(at)stf.teu.ac.jp
※atをアットマークに置き換えてください。