片柳研究所 東京工科大学

研究者インタビュー

キミの好きがデータ分析で人の役に立つ

キミの好きがデータ分析で人の役に立つ 1 | あれも!これも!/データ分析できたらいいかも!
キミの好きがデータ分析で人の役に立つ 2 | プロサッカー選手にGPSを装着して、/運動量と怪我との関係を分析!
キミの好きがデータ分析で人の役に立つ 3 | データ分析で地域活性化や、/未知の人気スポットを発見!
キミの好きがデータ分析で人の役に立つ 4 | 日々膨大なデータと向き合う私のリフレッシュ方法は/ドライブと料理「好き」が研究のヒントに!

研究とは「つながり」コンピュータサイエンス学部 伏見 卓恭 講師

  略歴
  ●静岡県立大学 経営情報イノベーション研究科 博士後期課程
  ●日本学術振興会 特別研究員(PD)
  ●筑波大学図書館情報メディア系 特別研究員

SNSからドライブルートまでネットワーク分析で知れば知るほど広がる世界

私はネットワーク構造やグラフ解析の手法を使って、移動経路をベクトル化する研究に取り組んでいます。難しく聞こえるかもしれませんが、例えば、八王子市内を移動する人のルートを向きと大きさで表現します。AIの一分野でもある機械学習という分析手法でその人の移動距離を数値化します。その数値が似ている人が多い、つまり、たくさんの人が同じようなルートを使っているとしたら、そこには何か面白い場所があるかもしれません。私の研究は、そんな隠れた人気ルートをデータで見つけ出すことができるのです。こういった研究の応用先として、SNSでの拡散を可視化したり、おすすめのドライブルート提案に応用できる可能性を探っています。

この道に進んだきっかけは、高校時代に出会った三角比でした。「サイン・コサイン・タンジェント」という規則的な美しさに心を奪われ、問題が解けたときの達成感から数学の面白さにどんどん引き込まれていきました。さらに、コンピューターや英語にも興味があり、教員免許の取得も視野に入れて大学に進学。今につながる道が自然とできていきました。数学は単なる学問ではなく社会のあちこちに溶け込んでいるものです。知れば知るほど世界の見え方が変わる感覚にワクワクして、そんな魅力をたくさんの人に伝えたいと思うようになりました。

社会貢献にもつながる

研究室ではSNSやWebといったオンラインデータを活用し世の中に役立つ技術の開発を目指しています。学生の興味や得意分野に合わせてテーマが決まるので、扱う内容も本当にさまざまです。SNSに日々投稿される膨大なテキストデータからAIを使ってトレンドを分析したり、Instagramなどの位置情報付きの画像から隠れた観光地の魅力を引き出したりする研究を進めています。さらに、ChatGPTでも用いられている大規模言語モデルを使って、英語の歌詞をリズムや韻を保ったまま自然な日本語に翻訳する研究に挑戦した学生もいます。どれも自由な発想から生まれたテーマで毎回新しい刺激をもらっています。

最近では、本学の医療保健学部の教員と共同研究を進めており、プロサッカーチームと連携して選手にGPSを装着しトレーニング中の運動量を計測することでケガとの因果関係の解明を目指しています。医療保健学部の研究では、「練習中のスプリントの回数や走行距離が多い選手ほど、シーズン中にケガをしにくい」というデータが得られています。そこで現在は、スプリントに至る前の段階、つまり選手の柔軟性や持久力といった生理学的要因とスプリント回数を組み合わせて、それがケガにどう関係するのかを分析しています。ただし、ケガ自体がそれほど頻繁に発生するものではないため、サンプル数が少ないという課題があります。長期間にわたってデータを蓄積・分析していくことで、より精度の高い解析が可能になることを期待しています。

こうした共同研究をきっかけに、今後は企業や行政との連携にも広げていきたいと思っています。特に地域活性化や観光促進など、社会とのつながりを意識した研究にチャレンジしていきたいです。

ワクワクの先の達成感

研究テーマの多くは、学生が「これをやってみたい!」と持ち込んでくるアイデアから始まります。そこから一緒に議論を重ね、どうやったら研究として形にできるか考えていきます。興味をもったことを自分の力で深めていく中でみんな楽しそうに研究してくれている姿を見るのが、教員としての何よりのやりがいです。
「SNSやWebデータを使って世の中に新しい価値を届けたい」
「数学や統計学を活かしてみたい」という人は、ぜひ一緒に挑戦してみてください。

ちなみに、私自身の趣味はドライブと料理です。講義が終わったあと、ふらっと新潟まで走り続けたり朝からキッチンに立って料理を作ったりするのが気分転換になっています。研究も趣味も、どちらも「どこかへつながっていく」ワクワク感が好きなのかもしれません。これからも、様々な人やアイデアとのつながりを大切にしながら、研究を続けていきたいと思っています。

あとがき
伏見先生は専門的で詳細な領域に焦点を当ててデータ工学を研究されています。そのため、インタビューの中で、「AI」という言葉は使われていませんでしたが、この記事ではわかりやすさを優先するためにAIという言葉で表現しています。