大山学長のホッとブレイク

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学長コラム第7回「これからの日本の大学生に必要なこと ――クリティカルシンキング」

2021年10月22日掲出

 みなさん、こんにちは。学長の大山です。今回は、これからの日本の大学生に必要なことは何かというテーマでお話ししましょう。

 日本は、島国で領土も大きくなく、人口もそれほど多い国ではありません。とはいえ、世界の一員として他の国々と渡り合うために、常に世界を見据えた考え方をする必要があります。世界の流れの中で、日本は何をするべきかを意識しなければならないのです。

 以前、読んだ日経産業新聞のコラムで、東京大学の教授でいらした山﨑弘郎先生が「協調性と独創性は相容れない性格のものだ」といった話をされていました。日本はやはり協調性ベースの国で、さかのぼると聖徳太子の「和を以て貴しとなす」から来ているのかも…といった内容のコラムでした。確かにそうかもしれません。日本の得意技は協調性で、戦後の高度経済成長期を含め、その得意技で伸びてきた部分があるのでしょう。その強みは今後もずっと持っていて良いと、私自身は思っています。他方、世界の一員である日本が、世界と協調することはそう簡単なことではありません。そこには新しい考え方、つまり相容れないものかもしれませんが、独創性を持つことにも挑戦しなければならないのです。そういうマインドを育てるにはどうすれば良いのかと考えると、“クリティカルシンキング(批判的な思考というより検証的な思考です)”に結びついていくと思います。
 クリティカルシンキングとは、正しいとされていることや既存の物事を鵜呑みにするのではなく、「本当か?」と疑い確かめる視点を持ちながら確認し、次に発展させていくことです。例えば、教科書に書かれていることは、勉強する側にとって完成された、決まっているものだから、それを丸々覚えなければならないという記憶中心の勉強になりがちです。高校までの学びは特にそうですね。もちろん大学にも教科書はありますし、その記述を信じてもらって構わないのですが、大学生になれば、「その内容は本当なの?」と疑いを持って、その背後にあるものをきちんと考える習慣をつくっていってほしいと思います。
 例えば、最近では鎌倉幕府のできた年の記述が変わったと聞きます。我々世代は1192年と習いましたが、研究していくと諸説出てきて、今は1185年に成立としている教科書が多いそうですね。そんなふうに時代と共に何かが明らかになって変わることは、技術の教科書にも当てはまります。今まで常識だと思われていたことも新しい事実によって、また学び方によっても変わっていくものですから、大学生であれば常識も検証的に考える意識を持つことが必要だと思います。そこから自然と創造性というものが出てくるからです。
 私自身、それを如実に感じたのは、アメリカの大学で過ごした1年間でした。アメリカでは何か自分なりの視点を見つけて反論したり、あえて人と違う視点での意見を言ったりすることで、その人の強みを表現することが当たり前という印象でした。常に他者とは違うことをしようという姿勢ですから、自ずと創造性も出てくるのでしょう。ですから日本としては、協調性を大切にしつつ、一方ではクリティカルシンキングをしながら、発展を考えていかなければならないのだと思います。