学長コラム第9回「東京工科大学が取り組む多彩な研究」
こんにちは、学長の大山です。前回、大学時代の醍醐味のひとつである“研究の面白さ”について取り上げました。今回は、実際に東京工科大学が取り組んでいる多彩な研究をいくつかご紹介しましょう。
皆さんは、ロボコンという言葉を耳にしたことがありますか?日本全国の大学や高等専門学校が参加するロボットコンテスト「NHK学生ロボコン」のことで、毎年およそ20のチームが自分たちのアイデアを駆使して開発したロボットを競い合わせます。そして優勝したチームは、日本代表として世界大会「ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト」に出場できるというものです。本学工学部では、このロボコンでの勝利を目指すロボコンプロジェクトに取り組んでおり、大学としてはこのプロジェクトを「戦略的教育プログラム」として積極的にサポートしています。
ロボコンプロジェクトは、工学部機械工学科の学生を中心とした1~3年生の学生が参加し、学年を超えて互いに学び、教え合いながら最終目標の大会に向けてものづくりを進めていくというものです。その過程では、授業や卒業研究、サークルともまた違った経験ができ、学生にとって大きく成長できる機会となっています。これまでに参加した学生を見ていると、例えば競技本番の土壇場でモーターが動かなくなるなど、困難に直面しながらも乗り越えていくことで、大きな達成感を感じているようです。また、とにかく色々と考える経験ができるということも大きいでしょう。チーム内で意見をぶつけ合い、時には語気を荒げることも経験しながら、プロジェクトを進めていく。そういうことが教育としてはとても大切です。
また、工学部ではもうひとつの「戦略的教育プログラム」として、再生可能エネルギーのみで走るEV(電気自動車)を製作するプロジェクトも動いています。これは工学部の機械工学科・電気電子工学科・応用化学科の3学科の学生がそれぞれ自分の専門分野で参加するという形で進めています。このプロジェクトも「全日本 学生フォーミュラ大会」出場が最終目標です。一昨年は出場できましたが、昨年は新型コロナ感染症の影響で大会自体が中止になりました。今年はまだどうなるかわかりませんが、大会出場を目指して学生たちに頑張ってもらいたいです。
一方、応用生物学部とコンピュータサイエンス(以下、CS)学部が協働で進めている研究もあります。応用生物学部では、がん細胞を発見する研究に取り組んでいますが、そこへCS学部の先生が加わり、AI(人工知能)の画像認識を使ってがん細胞を判別する研究が進められています。分野の異なる先生がそれぞれの特徴を生かして、新しいアプローチをしていくというのは、互いに刺激や得るものが多く、理想的だと感じています。もちろんそれは教員だけに限りません。この研究に関わっている応用生物学部の学生の中には、AIを学んでみたいという人も出てきて、直接、CS学部の先生に話を聞きに行く人もいるそうです。このように学生の興味を広げるきっかけになり、それをもっと追究したいという思いに応えられるのは、本学に6つの多様な学部があり、学部間を越えて研究できるという強みがあるからです。
本学としては、今後も他学部他学科の学生や教員が一緒に取り組める研究を少しでも多く提供できる環境をつくりたいと考えています。本学を含め多くの大学の学部は、専門性で区切られているため、縦割りが中心で、横の分野には手を出しにくい傾向があります。しかし、実学主義教育を掲げている本学は、現場に近いものをテーマに研究し、学ぶわけですから、本来、自分の学部学科の分野だけでは収まらないはずです。社会では色々な分野が横につながっているのですから、縦方向に専門を極めることは必要ですが、横に広げていくことも大切です。そういうことを教える方も学ぶ方も意識していかなければならないと思っています。