大山学長のホッとブレイク

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学長コラム第7回「東京工科大学のSDGs」

2022年10月28日掲出

こんにちは、学長の大山です。ここ数年、“SDGs(エスディージーズ)”という言葉があちこちで聞かれるようになり、さまざまな企業や組織がそれに取り組んでいます。今回は、東京工科大学におけるSDGsの取り組みについてご紹介しましょう。

 SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2015年に国連サミットで採択された国際目標です。2030年までに持続可能でより良い世界を目指そうと、17の大きな目標とそれを達成するための169の具体的なターゲットが設定されています。
 それらに本学の取り組みを照らし合わせてみると、例えば、気候変動やエネルギーに関する目標として、CO2を含む温室効果ガスの削減があります。本学の八王子キャンパスは、開学時から「コージェネレーションシステム」を導入していて、電力会社から購入する電気と、ガス会社から購入したガスを使って学内で発電した電気の両方を使用しています。そうすることで省エネルギーになり、その結果、CO2削減に繋げているのです。もちろん、それだけでは不十分ですから、高効率の発電機や新しい省エネの空調機器に入れ換えるほか、学内の9割の照明をLEDに換えました。また、今年度から八王子キャンパスの建物上に太陽光発電パネルを設置し、さらなるCO2の排出量削減に取り組んでいます。とはいえ、それでもまだ排出するCO2と吸収したCO2をイーブンにするカーボンニュートラルの達成は難しく、今後も幅広い取り組みを実施していく必要があります。
 ちなみに蒲田キャンパスは建物が新しいため、効率の良い冷暖房機の設置や省エネ構造ができており、東京都のCO2排出基準を当初からクリアできています。ですから今すぐ何かをする必要はないとも言えるのですが、今後、さらにCO2排出量を削減するための取り組みは必要になると思います。

 他方、研究や教育でもSDGsの目標に当てはまるものが多々あります。それだけSDGsは幅広いターゲットが設定されているのです。本学では、各学部の各研究テーマがSDGsのどの目標と関連しているかを示してもらっています。さらに今後は、それを意識した研究をしようという方向で大学全体として進めています。
また、本学の工学部では、サステイナブル工学を掲げ、教育や研究開発に取り組んでいます。これは工学部をつくるときに、これからの時代を見据えた工学部はどうあるべきか、というところから出てきたキーワードです。工学とはモノづくりですから、常にサステイナブル(持続可能性)な社会につながるモノづくりを考えるべきだという発想に立ちます。例えば、省エネという視点では、エネルギーをできるだけ使わないモーター技術を開発すること。また、土に戻るようなプラスチックを開発するというのもひとつですし、機械に関して言えば、頑丈で壊れにくい機械でありながら、廃棄後、簡単に壊せて次のモノに再利用できる構造にすることも大事です。このように、モノづくりをするうえで考えるサステイナブル性を軸にしているのが本学の工学部です。
 とはいえ、環境に配慮するモノづくりは、そう簡単ではありません。そこで学生たちにまず考えてもらうことが、「本当にこの材料はCO2をたくさん出しているのかどうか」ということです。つまり、ひとつの材料やモノをつくるときに、実際にどれだけCO2を出すのかということです。例えばプラスチック製品の場合、まず原油を加熱してプラスチックの材料をつくり、それをまた加熱・成型してひとつの部品にし、それを組み合わせてできた製品を世界中に運んで使ってもらい、最後に使い終わると捨てて燃やします。これがプラスチック製品のライフサイクルです。その全体を見て、実際にCO2をどの工程でどれだけ出すのかということを検討する考え方を知り、きちんと定量的に数字で捉えていきます。その上で、どの工程で材料やつくり方、使い方などを変えればCO2を削減できるかという発想をしていく必要があるのです。こうした製品の一生を評価する手法をLCA(ライフサイクルアセスメント)と言います。
工学部の授業ではこれをベースにして、サステイナブル工学を学んでいきます。定量的に評価する力を身に付けた上で、各専門分野の研究として使い方や材料などについて考えるのです。

私は折に触れて、クリティカルシンキング(検証的な思考)の重要性を伝えていますが、今回の話もそれに通じています。省エネで環境に良いとされているものは、本当にCO2の排出量低減につながるのか。その製品をつくるときや使用するとき、また廃棄するときにどれだけのCO2を出すのか。このように疑い・検証する視点を持って、トータルで考えてみることが大切です。