プレスリリース

Press Releases

東京工科大学 HOME> プレスリリース> 2017年のプレスリリース> ゲノムのメチル化レベルの簡便な測定法を開発 がん診断への応⽤に期待

ゲノムのメチル化レベルの簡便な測定法を開発 がん診断への応⽤に期待

2017年2月27日掲出

 東京工科大学(東京都八王子市片倉町、学長:軽部征夫)応用生物学部の吉田亘助教、軽部征夫教授らの研究グループは、がんの診断に有益なゲノムのメチル化レベルを簡便に測定する新たな方法の開発に成功しました(※1)。同グループがすでに開発したがん遺伝子のメチル化レベル測定法(※2)と組み合わせることで、より正確ながん診断への応用が期待されます。

【背景】
ヒトゲノム中のシトシン塩基のメチル化は遺伝子の発現を制御する「遺伝子スイッチ」として機能しており、正常細胞では正常なメチル化パターンが形成されています。
 一方がん細胞中では、
(1)がん関連遺伝子のメチル化レベルが異常になること
(2)ゲノムのメチル化レベルが低下することが知られています。
つまり、がん関連遺伝子のメチル化レベル異常の検出に加え、ゲノムのメチル化レベルを測定すれば、より正確ながん診断が可能になります。
 同グループは、すでに簡便にがん関連遺伝子のメチル化レベル異常を検出する方法を開発していることから、本研究では、ゲノムのメチル化レベルを簡便に測定できる方法を開発することを目的としました(図1)。

図1:開発済みの①がん遺伝子のメチル化レベル測定法と、本研究で開発した②ゲノムのメチル化レベル測定法
これらの方法を組み合わせることにより、より正確ながん診断が可能になります。

【成果】
本研究では、メチル化DNAに結合するタンパク質(methyl-CpG binding domain)とホタルルシフェラーゼ(※3)を融合させた人工タンパク質を合成しました。
この人工タンパク質を、ヒトゲノムDNA中のメチル化シトシンに結合させる際に、ヒトゲノムDNAに結合する蛍光物質を加えておくと、ルシフェラーゼの発光により、蛍光を発することを発見しました(図2)。
この蛍光強度は、ヒトゲノム中のメチル化シトシン量に依存するため、ヒトゲノムDNAに本人工タンパク質、蛍光物質、及びルシフェラーゼの基質を加えるだけで簡単にヒトゲノムDNAのメチル化レベルを測定できることを示しました。

図2:ゲノムのメチル化レベル測定法の原理
人工タンパク質がメチル化シトシンに結合すると、ルシフェラーゼの発光により蛍光物質が蛍光を発するため、試薬を混合するだけでゲノムのメチル化レベルを測定できます。

【社会的・学術的なポイント】
新たに開発した手法では、検体に試薬を加え、蛍光強度を測定するだけで簡単にゲノムのメチル化レベルを測定できます。今後、この蛍光強度をスマートフォンで検出する方法を開発することで、在宅で誰でも簡単にがん診断が可能になることが期待されます。

(※1)本研究成果は、米国の科学誌「Analytical Chemistry」2016年9月20日号に掲載済みです。(論文名「Global DNA Methylation Detection System Using MBD-Fused Luciferase Based on Bioluminescence Resonance Energy Transfer Assay.」, Analytical Chemistry, 2016, 88(18), pp 9264–9268, DOI: 10.1021/acs.analchem.6b02565)
また、本研究は公益財団法人中谷医工計測技術振興財団からの助成を受けています

(※2)米国の科学誌「Analytical Chemistry」2016年6月28日号に掲載済みです。(論文名「Detection of DNA Methylation of G-Quadruplex and i-Motif-Forming Sequences by Measuring the Initial Elongation Efficiency of Polymerase Chain Reaction」, Analytical Chemistry, 2016, 88 (14), pp 7101-7107, DOI: 10.1021/acs.analchem.6b00982)

(※3)ルシフェラーゼ:ルシフェリンとATP存在下で発光反応を触媒するタンパク質

■東京工科大学応用生物学部 軽部征夫・吉田亘研究室(生命機能応用)
生体分子の優れた機能を利用し、疾患マーカーなどを検出する方法の開発や、ゲノムの解析、新たな生体機能の応用研究を行っています。
[主な研究テーマ]
 1.有機物分解微生物の探索
 2.微生物を用いた電気化学測定法の構築
 3.メチル化DNA検出法の開発
 4.DNA四重鎖構造の機能解析
 5.生物変換法の開発
 6. バイオマスエネルギーの開発

【研究内容に関しての報道機関からのお問い合わせ先】
東京工科大学 応用生物学部 助教 吉田亘
Tel 042-637-4517(研究室直通)
E-mail yoshidawtr(at)stf.teu.ac.jp
※atをアットマークに置き換えてください。

■生命機能応用(軽部征夫・吉田亘)研究室
https://www.teu.ac.jp/info/lab/project/bio/dep.html?id=9