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2018年メディア学部長メッセージ

2018年1月12日掲出

「受験勉強って何の役に立つの?」柿本 正憲

メディア学部 柿本 正憲教授

 受験勉強ではたくさんの知識を詰め込んだり、練習問題を解いたりします。つい目的を見失いがちになります。そもそも学力を上げることに精いっぱいで、その勉強の目的まで考える余裕もないかもしれません。一方で、こんなことをやって本当に将来役に立つのか、何となく疑問に思いながら勉強している受験生も多いことでしょう。

 その疑問に対して、私からは、全部とは言わないが皆さんが思っている以上に役に立つ、と申し上げたいです。

 これからはますます創造性が重要な時代になっていきます。知的な仕事であっても解き方が与えられた問題は、AI(人工知能)が人間に代わって解決します。人間に求められる仕事は、解き方を考え出す問題解決力、あるいは問題そのものをはっきり浮き彫りにする問題発見力です。それらの力に不可欠なのが創造性、つまり新しいアイディアを考え出す能力です。

 受験問題は答えが決まっているから創造性とは関係ない、というのは誤解です。確かに入試問題は創造性自体をテストするものではありません。だけど考えてみてください。新しいアイディアの源泉はどこにあるのでしょう。それはその人が持つ膨大な知識です。

 どんな新しいアイディアも、絶対に例外なく、既存の知識や概念の組み合わせです。創造性の高い人はそのような新しい組み合わせを見出すのが得意な人、ということになりますが、元になる知識や概念が乏しければ組み合わせようがありません。詳しくはジェームス・W・ヤングというカリスマ広告クリエーターの著書「アイデアのつくり方」(発行:CCCメディアハウス)に紹介されています。1時間ぐらいで読める本なので受験生にもお勧めです。私も繰り返し読んでいます。

 大学に入るために必要だから仕方なく受験勉強をやっている、と考えるとつらくなりますが、いつか誰も考え付かないアイディアを産みだすためのネタを仕込んでいる、と思えば少しはわくわくしてくるでしょう。

 受験勉強の知識が直接ネタにならなくても、アイディアの元になる高度な概念や専門知識を身につけるには、受験で鍛えた思考力や基礎知識が必要です。そして、それらの高度な概念や専門知識を身につける場がもちろん大学です。じゃあ新しい組み合わせを見出す力はというと、それを鍛えるのも大学です。

 大学1、2年ぐらいまでは受験の延長のような勉強も多いですが、専門分野の基礎知識も学びます。2年の後半や3年生になると専門性も高くなり、4年生では卒業研究で新しいアイディアを考える経験をします。知識だけでなく、1年生のうちから演習の授業を通じて知識を問題解決に結びつける訓練を行います。4年生の卒研は問題発見から取り組むということになります。

 東京工科大学メディア学部で具体的に何を学ぶか、詳しくは大学案内やWebの紹介ページや「メディア学部ブログ」で読んでもらうとして、ここでは一つだけ強調しておきます。それは、AIによって置き換えられる能力ではなく、AIを使う側、AIに仕事をさせる側の素養を身につけて卒業できる、ということです。

 メディア学部は文理芸術融合で、カバーする専門分野は幅広いですが、共通する点はICT(情報通信技術)を駆使する能力がつくことです。AIを単なる消費者として利用するのは誰でもできます。しかし、AIに仕事を教え込むにはその仕事の分野の専門知識のほかICT活用能力が不可欠です。メディア学部はその両方を修得する学部だと憶えてください。