佐藤拓己応用生物教授が執筆した『恐竜はすごい、鳥はもっとすごい!―低酸素が実現させた驚異の運動能力― 』(光文社新書)が発刊
応用生物学部・食と農の未来研究センターの佐藤 拓己教授は、生物界において卓越した運動能力を有する鳥とその祖先とされる初期獣脚類(注1)について、新たな進化学説を交えて論証した著書「恐竜はすごい、鳥はもっとすごい!―低酸素が実現させた驚異の運動能力―」を上梓しました。1月16日(木)より光文社新書として発刊されます。
恐竜の世界は、十分なインパクトをもって伝えるには、理論だけでなくリアルなイメージとして提示する必要があります。このような背景から、本書では恐竜復元画の国内第一人者である本学副学長で大学院デザイン研究科長の伊藤 丙雄教授が、代表的な初期獣脚類である「コエロフィシス」を、著者の学説に基づく新たなビジュアルとして描き下ろしています。
(注1) 2億3千万~1億8千万年前(三畳紀後期からジュラ紀初期)に存在したとされる、コエロフィシスを代表とする直立二足歩行の原始的な恐竜を初期獣脚類とよぶ。
■鳥と獣脚類の卓越した運動能力の秘密に迫る
ヒトが酸素ボンベを必要とする高度8000mのエベレスト上空を、ツルの群れは悠々と越えていく。本書では、こうした生物の中でも卓越した鳥類の運動能力は、鳥が哺乳類などとは別次元のミトコンドリア(本書では「スーパーミトコンドリア」と呼ぶ)を有しているからであると提言。また2億5千万年前の大絶滅(PT境界)から1億年近くも続いた低酸素環境を生き残るために、その祖先である初期獣脚類がスーパーミトコンドリアを持つに至ったという新しい進化学説を提示しています。身近に空を飛んでいる鳥の運動能力が獣脚類から受け継がれていると考えると、鳥に対する見方も変わるとともに、ドロマエオサウルス科の後期獣脚類であることが実感できるといいます。さらに鳥は同じサイズの哺乳類よりも数倍程度長寿であり、がんや糖尿病、認知症、感染症などに罹患することは稀であることも、祖先からスーパーミトコンドリアを受け継いでいるためであり、これを生涯維持しているため、死ぬ直前まで飛ぶことができるとしています。著者である佐藤先生は「鳥のように生き、鳥のように死にたいという強い思いから本書を書いた」とコメントしています。
■新たな進化学説に基づく、コエロフィシスのニュービジュアルを公開!
現在の鳥と同等の運動能力を持ち、2億2千万~1億9千万年前の生態系を制覇した体長2〜3mほどの直立二足歩行の恐竜。哺乳類よりもはるかに高いミトコンドリア活性を備え、背骨を水平にして骨盤の上に持ち上げていた。インスリンに対して感受性を失っていたため、皮下脂肪や内臓脂肪は皆無で、筋肉の筋がひとつひとつ明瞭に見えた。首、腹、前肢、後肢、尾は、従来の復元画よりもはるかにスリムだったろう。また持続的な高速走行を可能にするため、背骨を水平に安定化させる必要があった。前肢の後ろ側に大きな風きり羽根は、飛行機が高度を下げるため飛行機の主翼を安定化するスポイラーのようであり、頭の上のトサカのような羽毛は、垂直尾翼のような役割をしたと考えられる。
【書籍概要】
タイトル: 恐竜はすごい、鳥はもっとすごい!―低酸素が実現させた驚異の運動能力―(光文社新書)
著 者: 佐藤拓己(東京工科大学応用生物学部・食と農の未来研究センター 教授)
復元画制作: 伊藤丙雄(東京工科大学副学長 / 大学院デザイン研究科長・教授)
発 売 日: 2025年1月16日
発 行 元: 光文社(全国の書店、オンライン書店などで発売)