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2019年メディア学部長メッセージ

2019年1月9日掲出

「受験勉強って何の役に立つの?」柿本正憲 教授

応用生物学部 梶原 一人教授

 Webが発達し、多くの知識はネットで検索することによって簡単に得られるようになりました。知識詰め込み型の受験勉強は将来役に立たなくなる、ということがよく言われています。確かにそのような側面はあります。ただ、この言説が漂わせる「知識詰め込みの勉強はまったく役に立たなくなる」というセンセーショナルなニュアンスに騙されてはいけません。

 つまり、知識詰め込み型の勉強がまったく役に立たなくなることはないのです。むしろ、あるレベルの知識の多寡は、Webの発達で問題解決能力の格差をかえって拡げる作用があるように思います。

 レベルというのは具体性や詳細度と言い変えてもいいです。例えば、歴史上のできごとの年号は極めて詳細度の高い知識です。このような知識はそれこそ検索すればわかるし、正確な年号の数字そのものはそれ以上何かに応用できませんから、確かに詰め込んでも役に立たないと言えます。

 ネットによってかえって能力差を拡げてしまう鍵は、少し具体性が低く抽象度が高い知識の有無です。別の言い方をすると一連の具体的な知識をつながりとしてグループ化できている知識です。このようなつながりが意識下にあると検索ワードの幅が拡がります。単純な「○○○ 使い方」みたいな即物的な知識ではなく、より複雑で高度な知識を掘り出せる確率が高まります。

 このように思うようになった理由は、学部4年生の卒業研究指導経験からです。ある研究対象について関連する既発表の論文を検索させることがよくあります。このときいろんな論文や技術を見つけ出せる人とそうでない人との差がたいへん大きいのです。見つけ出せる人の共通点は、基礎知識がしっかりしていることです。基礎がしっかりしているというのは、断片的知識同士のつながりが意識下にあるということです。 

 ネット上では、基礎も含んだ体系立った知識よりも、具体的で断片的な知識が圧倒的多数を占めます。ネットだけで正しい基礎知識を身につけるのは容易ではありません。やはり、時間をかけて教科書や専門書のような一定のボリュームの内容を理解しモノにするのが結局は近道です。

 受験生の皆さんにとっては、今まさに勉強している内容は高度な知識と感じるかもしれません。しかし、それは違います。大学や実社会の専門家からみたら受験勉強は完全に基礎知識の学びです。しかも間違いなく入念に体系化された知識です。

 もし、受験勉強は知識の詰め込みだからネット社会では無駄だ、と思っているとしたら、即座にその考えは忘れましょう。受験勉強はネット社会で能力を発揮するための貴重な基礎固めの機会です。大学に入っても体系的な基礎の勉強はしますが、高校の内容は大学での基礎をさらに下支えする強固な基盤になります。迷わず受験勉強に邁進してください。

 受験勉強で詰め込んだ知識は、新しいアイディアを創造して問題を解決するのにも役立ちます。これについては一年前に受験生へのメッセージとして書きました。ぜひこちらも参照してください。 

 学部からのメッセージですのでメディア学部の宣伝もします。東京工科大学メディア学部で具体的に何を学ぶか、詳しくは大学案内Webの紹介ページ「メディア学部ブログ」で読んでください。ここでは一つだけ強調します。入学後に幅広い分野から自分の専門を選べますが、どの分野に進むにしてもIT(情報技術)の素養がしっかり身につく学部です。 

 受験で鍛えた強固な基礎知識の上に大学での専門能力を築くのはどの大学学部も一緒です。その中で、メディア学部ならITを駆使し活用する能力が確実に加わります。ネットを当たり前に活用する時代、AIを活用する時代にはうってつけの学部です。