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プロジェクションマッピングを空間分野の教育と結び付けた新しい試みが始まっています!

2017年7月14日掲出

デザイン学部 田村吾郎 講師

田村吾郎講師

アートディレクションや空間演出、オペラやクラシックコンサートの舞台演出、音楽家のブランディングなど多岐にわたって活躍中の田村先生。今回は、8月11日(金・祝)に行われるプロジェクションマッピングの上映イベント「八王子市市制100th記念 プロジェクションマッピング in東京工科大学」の詳細やデザイン学部の新カリキュラムについてお聞きしました。


「八王子市市制100th記念 プロジェクションマッピング in東京工科大学」は、 デザイン学部の先生を中心に他学部の先生も加わり、制作されました。

デザイン学部

・田村 吾郎 講師
・松村 誠一郎 准教授
・大西 景太 講師
・深澤 健作 講師
・御幸 朋寿 助教
・宮元 三惠 准教授
・酒井 正  講師

コンピューターサイエンス学部

・柴田 千尋 講師

■8月に開催されるプロジェクションマッピングのイベントについて教えてください。

プロジェクションマッピング

 これは今年、100周年を迎える八王子市の記念事業のひとつとして行われるもので、市と本学デザイン学部の協働でプロジェクションマッピングを制作し、八王子キャンパスの片柳研究所の建物に投影するというプロジェクトになります。
デザイン学部は企画段階から関わっていて、八王子市市制“100年”に絡めた内容にすることはもちろん、単にプロが制作した映像を上映するのではなく、八王子市民が主体となるものにしようと考えていきました。具体的には、市民の方と一緒にどういうイベントにするかというところから考え、コンテンツ制作にも参加いただき、最終的にそれらを使ったプロジェクションマッピングの上映も見に来ていただくという、長いスパンで携わってもらう形で進めています。例えば、市民の方に八王子市とはどういう市か、どんな文化や風土があるか、将来どんな街になってほしいかといったヒアリングを数回、実施しました。それをもとに八王子市の言い伝えや市民の皆さんが共有している価値を織り込んだ物語をつくり、絵本仕立てにしたアニメーションをつくろうと考えています。先日も、このプロジェクトに有志で参加している本学部・工業デザインコース空間専攻の学生らと市内の小学校でワークショップを行い、子どもたちや地域の方々にこのコンテンツで使う絵を描いてもらったところです。今後はそれらを元にアニメーションをつくり、ナレーションと共にプロジェクションマッピングの中で動かそうと考えています。そしてプログラムの最後は“この先100年”という八王子市の未来に目を向けたイメージで仕上げる予定です。

  • 「プロジェクションマッピング」イベント紹介動画

■プロジェクションマッピングといえば、デザイン学部の演習や授業でも新たに扱い始めたそうですが。

 今年度から4年間かけて実施する戦略的教育プログラム「プロジェクションマッピングを用いる実践的教育プログラム」のことですね。これは本学部の「感性演習」や「スキル演習」、「専門演習」、複数の講義科目でプロジェクションマッピングに関連するテーマを設け、横断的に学ぶことでプロジェクションマッピングの新しい表現方法や技術の開発に結び付けようという試みです。例えばCADを使って建物の構造をCGでつくり、投写距離の計算をしたり、画像加工にAIを使ったりしながら、学生たちに実際にプロジェクションマッピングをつくってもらおうと考えています。また、最終年となる4年後には、蒲田キャンパスでプロジェクションマッピングを使った成果発表ができたらと思っています。
プロジェクションマッピングを大学の授業、とりわけ空間分野の教育に取り入れているところは、非常に珍しいです。従来、映像はモニターの中に映されるものだったので、カテゴリーはどちらかというと平面でした。本学部でも映像デザイン専攻は視覚デザインコースの中に入っています。ですから空間分野の教育プログラムの中で映像を扱うことは、従来のアカデミックな仕組みの中では見られませんでした。しかしプロジェクションマッピングは、建物や立体物、空間的なものに対して映像を投影していくので、カテゴリーが空間になります。そこで本学部では、今後、プロジェクションマッピングのような映像を積極的に使った空間表現が増えてくることを見越し、その先駆けとしてプロジェクションマッピングを授業や演習に導入したのです。

■今年度からデザイン学部では、新カリキュラムが始まりました。先生が担当される工業デザインコースでは、どのような手ごたえを感じていますか?

 これまでは視覚、映像、空間分野を一通り学んでから専攻を決めるという流れで、幅広く学べるという長所がある一方、もともと興味が明確な学生にとって興味のない分野を学ぶことは、モチベーションを保ちにくいというケースも見受けられました。しかし新カリキュラムでは、最初に「視覚デザインコース」「工業デザインコース」という大きな枠を選択し、自分の学びたいものを選んで学べる形になったので、どの学生もモチベーションが高いように感じられます。
また、本学部の工業デザインコースには、工業デザイン専攻と空間デザイン専攻があり、3年前期の専門演習では、そのうちの半期で工業デザインとしてプロダクト(家電)の提案をし、もう半期で空間デザインとして家電を使ったライフスタイルの提案をします。本来、空間と工業は別ジャンルで、多くの美術系大学では入学時に専攻が分かれますが、本学では“家電”という共通項を通じて、プロダクトと空間、それぞれの学びをリンクさせているんですね。例えば新しいドライヤーをつくりたいと思ったら、単にそれを考えるだけではなく、展示会やショールームで人にどう見せるのかというところまで考える、あるいはそのモノが生活にどんな変化を起こすかというところまで考えていかないと、本質的なプロダクトの価値には到達できません。そういう点で空間と工業を連携させているのが、本学部の工業デザインコースの特徴でありユニークな部分です。

■先生のご研究の近況と、今後の展望についてお聞かせください。

 以前から映像装置の開発をしていたのですが、昨年11月に商品化し、お披露目しました。幅約5m、高さ約3mの巨大な半球状のスクリーンに、1台のプロジェクターで4Kや8Kの映像を映し出す「WV Sphere5.2」という映像システムになります。これは球体に映像を映し出すことで、普段、人間がモノを見ているときの視野角や視野の使い方を再現でき、その場にいるような臨場感を体験することができます。また、解体して持ち運べ、数時間で組み立てられるので、映画のプロモーションイベントで使用されたり、海外の大規模イベントで2020年の東京五輪のPRに使用されたりと、さまざまな場所で活用されています。また、レーシングシミュレーターや深海・宇宙での作業など、特殊な操作や限界域での操作のトレーニングにも活用できます。
今後の展望としては、とにかく新しいこと、自分がまだできていないことに挑戦していきたいですね。今はこの映像装置の延長線上として、特に空や宇宙に興味があるのですが、それをデザインと結び付けて、何か新しいことに取り組めたら面白いなと思っています。

「WV Sphere5.2」レーシングシミュレーター

■八王子市市制100th記念マッピング:
http://event.teu.ac.jp/event/pmp/index.html

・次回は8月11日に配信予定です。