ロボコンは夢があるだけでなく、授業では得られないさまざまな経験と知識を与えてくれる!
工学部 機械工学科 上野 祐樹 助教
ロボットとそれを操作する人との間にあるインターフェースの技術研究に取り組んでいる上野先生。実は2008年の「NHK学生ロボコン」優勝経験者でもあります。そんな上野先生に、ロボコンへの挑戦をサポートする工学部機械工学科の戦略的教育プログラムについて語っていただきました。
■今年4月から始まった機械工学科の戦略的教育プログラム「ロボット開発による先進的教育プログラム」について教えてください。
ひとことで言うと、毎年6月に開催される「NHK学生ロボコン」に挑戦するためのプログラムです。参加を希望した学生たちがロボコン出場ないし優勝を目指してチームでロボット開発に取り組み、その過程で通常の授業ではなかなか身に付けられない高度な技術や知識を学び、組織でのものづくりに欠かせないコミュニケーション能力やプロジェクトを完遂する力などを養う教育プログラムになります。
対象は1年生から4年生までの学部生で、工学部機械工学科の学生優先ではありますが、基本的には学部学科を問わず募集しています。現状、メンバーは1~3年生が40人ほどいて、機械工学科の学生以外には工学部電気電子工学科が1名、応用生物学部が2名います。1年生の場合、最初は何の知識もないのが当たり前ですから、学部学科による差は特にありません。ですから興味や意欲のある学生には、どんどん参加してもらいたいと思っています。
具体的な取り組みとしては、今年の4~6月頃までは、加入したばかりの1・2年生に、このプログラム独自の講習会に参加してもらい、機械加工や3D-CAD、制御の基礎を学んでもらいました。一方、6月には今年の「NHK学生ロボコン」があったので、このプログラムが始まる以前の去年からロボコンに参加している2年生の経験者6人は、本大会に向けたロボット製作の追い込みをしていました。
今は(※取材時は7月)、8月末に発表される来年の「NHK学生ロボコン」の競技テーマを待っているところなので、それまでは学生をいくつかのチームに分けて、小さいロボットをつくってもらい、学内でミニロボコンを開催しようと進めているところです。特に初めて参加した1・2年生は加工方法やプログラミングを覚えたばかりで、それを実際のロボットにどう使うのかを知らないので、それを経験させる狙いがあります。さまざまな技術をいかにロボットに活用していくかが、ロボット開発の難しい部分ですからね。
ちなみにミニロボコンは基本、全員参加ですが、今年の「NHK学生ロボコン」に出場した2年生6人に限っては、すでに経験者ですから別の課題を与えています。というのも今年の大会で、制御技術が自分たちの弱点だとわかったからです。制御技術というのは、ロボコンのロボットが目的地まで正確かつ高速に移動するとき、モーターでタイヤを動かしたり、自分のいる位置を計測したりすることに関わる技術です。今は2年生の大会経験者たちが、制御の反省点を踏まえたロボット開発に取り組んでいるところで、それを夏休みに出場予定の学外のロボコン大会で活かしてもらおうと考えています。
講習会の様子
学内ロボコン大会
学内ロボコン大会
練習風景
大会本番の様子
大会本番の様子
ロボット開発による
先進的教育プログラム
■先生としてはロボコン出場を通して学生にどんなことを学んでほしいですか?
ロボコンは、実際のロボット開発をチームで取り組むところが特長です。それは授業とは全く違っていて、教員も誰も答えを知りませんし、期限があるので最後はどれだけ不格好でもとにかく動くもの、競技できるものに仕上げなければなりません。技術やアイデアを追究したい気持ちは、誰しもあると思いますが、それをしていると期限に間に合いません。そこで判断を下して、ある種、割り切って開発を進めていく。そういう社会で仕事をするのと同じような経験を、このプログラムを通してすることができます。
また、私は大学時代にロボコン出場経験があって、国内大会で優勝し、国際大会ではベスト4に入りました。その経験も学生に伝えたいと思っています。国際大会への出場が、私にとって初の海外でしたが、その経験がなければ、大学院へ進学して研究を始め、学会発表などで海外へ行くという選択をしなかったかもしれません。今の私の原点はロボコンであり、国際大会に行けたからこそ自分の知らない世界が拓けたと言っても過言ではないのです。学生にも、そういう人生が変わるような経験をしてほしいと思っています。
■今後の展望をお聞かせください。
このプログラムの最終目標は、高望みと言われるかもしれませんが、ロボコン国内大会優勝、そして海外大会での優勝です! また、このプログラムは4年間の実施計画ですが、それが終了した後も、本学がロボコンに出場し続ける常連校となれるように、学生が学生を育て、後輩たちが先輩たちの知識や経験、技術を受け継いでいくシステムをつくっていきます。今のところ、私は監督者というより学生と一緒に取り組んでいる状況なのですが、来年以降は、その関わり方も変えていくつもりです。今年の大会に出場した2年生6人が大きく成長してくれたので、今後は彼らに後進の育成やプロジェクトの運営を任せていきたいと考えているのです。同様に講習会も、今は私や修士の学生が教えていますが、ゆくゆくは学部生だけで完結させ、上級生が下級生に教える講習会にしていくつもりです。人に教えることで、自分の知識をより深め、自らも学ぶことになりますから。
■最後に高校生・受験生へのメッセージをお願いします。
このプログラムに参加している学生は、自ら手を挙げて参加しただけあって、かなり熱心に取り組んでいます。みなさんも大学に入学したら、ぜひ自分のしたいことを見つける努力をしてください。興味を持ったものを自分で調べるなどして突き詰めていくと面白い発見があり、さらにそれを突き詰めていくことにつながると思います。
また、「NHK学生ロボコン」は毎年ルールが変わるので、毎回新しい挑戦をすることになります。新しい技術を身に付け、大会に出れば注目もされます。そういう点では、自分たちの取り組んだことが評価されるので、よい経験になるはずです。しかもこの大会は、一人ではなくチームで取り組むので、その分、収穫も大きく、達成感や喜びを感じられるはずです。本学でロボコン出場を目指して、一緒に大きく成長していきましょう!
・次回は10月13日に配信予定です。