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国際交流や研究発表の場となる「Cumulus」を楽しいグローバルな世界とつながるきっかけにしたい

2018年6月11日掲出

メディア学部 近藤邦雄 教授

デザイン学部 松村誠一郎 教授

メディア学部 近藤邦雄 教授
                デザイン学部 松村誠一郎 教授
 今年4月、デザイン学部とメディア学部は、アートやデザイン教育の質を高める目的で設立された国際連盟「Cumulus」(クムルス)に加盟しました。その狙いやメリットについて、今回の加盟に尽力したデザイン学部の松村先生とメディア学部の近藤先生にお話を伺いました。

■まず、「Cumulus」とは何かというところからお聞かせください。


デザイン学部松村先生とCumulus会長

松村誠一郎先生(以下、松村):「Cumulus」は、世界各国のアート、デザイン、メディア系の教育機関が加盟する国際連盟のことです。今年は14ヵ国25校3団体が加わり、現時点(2018年5月)で55ヵ国275校が加盟しています。

近藤邦雄先生(以下、近藤):今、日本を含め世界では、従来からある工学部や経済学部といった文系理系と呼ばれる分野の学会以外に、芸術と科学が融合したような分野の学会が非常に注目される傾向にあるんですね。例えば、本学のデザイン学部、メディア学部もそうですが、今までのように絵具や筆といった道具だけで絵を描くのではなく、デジタル技術を利用して新しいことに挑戦しようといった新しい教育を打ち出す学校が世界的に増えています。そういう流れの中で続々と新しい教育方法や研究が出てきているので、国際的に交流することでそれらに触れ、さらに発展していこうと、「Cumulus」に参加する教育機関が増えているんだと思います。もちろん私たちもその目的で今回、加盟することにしました。

Cumulus(クムルス)
Cumulus(クムルス)

■加盟することで、具体的にどんなことが期待できるのでしょうか?

松村:デザイン学部の立場からいうと、教員や学生が自分の作品や研究を発表できる国際的な場ができたということが一番大きいと思います。例えば、メディア学部は技術に関する論文にプラスしてシステムのデモンストレーションを提供するという、従来からある学会に即した形での発表ができます。しかし、デザイン学部の場合はアウトプットが技術ではなく、作品の表現やプロジェクト、教育成果となるので、従来の学会では発表先が限定されていました。一方、「Cumulus」は、作品やプロジェクトに論文を添えて出せたり、教育メソッドの研究発表という、非常に面白いスタイルをとっています。そこが私たちデザイン分野の人間にとっては、メリットであり魅力だと言えますね。

近藤:メディア学部は芸術科学会に所属している先生方が多いので、そこで教員や学生がメディアに関する色々な研究成果を発表しています。また、CGなどのメディア系表現やコンテンツ制作、ゲーム制作などは、情報処理学会でも発表することを推進しており、教員が開発したCGの基礎プログラミング用ツールで優秀教育教材賞を受賞しています。それから関東工学教育協会では、ゲームやアニメなどのデジタルコンテンツ制作の研究と教育に対して表彰を受けています。国内ではそういう場で発表し、評価を得てきたメディア学部ですが、今後は国際的な発表の舞台として「Cumulus」を大いに活用し、交流していきたいと思っています。

松村:先日、近藤先生と参加した、フランス・パリで開催された「Cumulus」の学会でも、美術・デザイン教育の方法論について発表する人たちが多かったですよね。そういう点から言えば、デザイン学部は今年で設立9年目を迎えましたが、これまでに非常にユニークな教育を積み重ねてきました。もともと本学部は、美術大学に入学することを目指す高校生ではなく、デザインに興味を持った、ごく一般的な高校生を入学者として受け入れ、教育とトレーニングをしている学部です。ですから、その教育メソッドは、かなりオリジナリティの高いものだと言えます。つまり美大でも工学部でもない独自のスタイルで、例えば、短期間で一定のレベルの絵が描けるようになったり立体造形を作れるようになる教育メソッドを実践しています。それを世界に発表しないのはもったいないと思うんです。

近藤:東京工科大学は、常に新しい学部をつくって、新しい教育にチャレンジしてきた大学ですからね。メディア学部も前例のないところから立ち上げて、15年かけてようやく形にしてきたところがあります。つまり新しい考えで教育をするので、大学の教員としては、その教育方法自体が研究対象となるわけです。教科書をつくるところから始め、その学生にあった学びを提供していくという点ではメディア学部もデザイン学部もすごく苦労して、新しいアイデアで教育体系をつくっています。そういう長所を対外的にきちんと知らせていくことが大事だと思うんです。その蓄積によって、工科大で新しい教育が受けられると世界中に知ってもらい、結果、本学の授業を受けたいという人が増えていってくれればと思います。それは加盟のもう一つのメリットである、国際的な連携にもつながっている話です。

松村:実際、今回の学会でも色々な国の参加者から質問を受けました。日本の、東京の教育機関がどういうことを教えているのかということに、大きな関心が寄せられていると感じました。また、国際的な連携に関してよく聞かれたのが、交換留学制度いわゆる単位互換制度があるかということと、短期間での教員同士の研究協力はできるかということでした。デザイン学部はまだ国際化がそこまで進んでいませんから交換留学制度はないのですが、海外のデザイナーや研究者による特別講義やワークショップを開催しているという状況です。

近藤:メディア学部は多くの研究室で留学生を受け入れていますし、海外の先生の招待講演を行ったり、海外の提携校に学生を連れて行き、こちらの成果を現地で発表したりもしています。そういうことを学部としてずっと継続していけると、「Cumulus」内でも一層交流の幅を広げていけるのかなと思っています。

松村:デザイン学部は国際化に関してはまさにこれからです。この「Cumulus」加盟を機に、メディア学部を見習ってどんどん国際化を進めていきたいですね。

■今後の展望をお聞かせください。

松村:Cumulusは年に2回、国際学会が開かれます。直近では、今年11月に中国・上海の近くにある江南大学主催で開催される「Cumulus」の学会で、今、私が携わっているプロジェクト関連の研究発表をしようと準備を進めています。まずは私が先陣を切ってチャレンジしようかと(笑)。また、来年はフィンランドのラップランドで学会が開かれるのですが、デザイン学部の教員の中で早くも興味を示してくれている先生がいます。

近藤:せっかく加盟したのですから、その場を活用して、どんどん研究発表をしていきたいですよね。教員が世界に出て新しい分野を見たり、発表したりという機会が増えれば増えるほど、そこで得たものは学生の教育に反映されます。最先端の研究を通じた良い教育をすることが本学の目標ですから、我々教員としては、研究成果を通じて新しいことを学生に伝えていくことに、これまで以上に力を入れていくつもりです。

松村:あとは今、日本では「グローバル化」「国際化」が声高に叫ばれていて、何か大変なことを成し遂げなければならないという雰囲気があるように思います。しかし、私自身の留学経験を振り返っても、それほど気負う必要はないのかなと思います。本来、人との交流や研究、教育は楽しいもので、国際的な舞台でもそれはまったく同じだからです。「Cumulus」が、そういう楽しいグローバルな世界とつながるきっかけになってくれることを願っています。

近藤:そうですね。先生方のそういう世界と関わる姿を見て、学生が影響を受けて国際的視野を広げてくれれば、一番良いなと思います。それから国際化を進めていくには、大学で支援する体制を整備する必要があるので、そういうところも今後、考えていきたいです。

Cumulus(クムルス)
Cumulus(クムルス)


■アート、デザイン、メディアに関する国際連盟Cumulusに加盟 【パリ出張報告その2】
メディア学部のブログ:
http://blog.media.teu.ac.jp/2018/05/cumulus-3dd7.html

■Cumulus members Tokyo University of Technology School of Design, School of Media Science:
http://www.cumulusassociation.org/members/TokyoUniversityofTechnology/

・次回配信は7月6日を予定してます。