工学研究科は、サステイナブル工学という新分野を研究し、開拓できる唯一の大学院です!
工学部 応用化学科/大学院 工学研究科サステイナブル工学専攻 片桐利真 教授
2019年4月、東京工科大学に大学院工学研究科サステイナブル工学専攻が誕生します。今回は、その詳細を工学研究科長である片桐先生に伺いました。
■まず、大学院とは、どういうところかということからお聞かせください。
受験生・高校生の皆さんに知っておいていただきたいのは、大学院は大学の単なる延長ではないということです。大学の学部で学ぶ学生(学士)は、講義や実習を通じて、既にわかっていることの最前線までを学ぶ、いわば人類の“知”の最前線にまで到達することが目的だと言えます。そしてそれは、大学側が用意したプログラムに参加することで達成できます。ですから学士は、運動会で言えば“参加賞”ですね。しかし、そこから先にある大学院の修士課程や博士課程の学生は、人類の知の最前線をさらに押し拡げる仕事ができる能力を身に付けなければなりません。ですから、大学と大学院では、まったく目的が違うのです。
修士の学生は、人類の知の最前線に到達したところから、さらにそれを自分で拡げることが求められます。そのためには、教員から与えられた課題を自分で考えて、解決するための戦術を立てられるようにならなければなりません。それには相当な努力が必要です。ですから修士は、“努力賞”だと言えます。それが博士となると、今度は自ら課題を見つけ、自ら解決するために戦略まで立てないといけません。つまり、どうなるか挑戦してみないと分からないことに対して、戦略を以て成果を出さなければならないのです。それがうまくいったという証明ができて、初めて博士号がもらえます。ですから、ある意味“1等賞”でなければなりません。このように、学士、修士、博士では、まったくその価値が違っているのです。
それに伴い、社会的な評価ももちろん変わってきます。例えば、国内における正規労働者の生涯収入は、学部卒業生に比べて大学院卒業生の方が4~5000万円多いという調査結果があります。また、海外に出れば、その差はさらに顕著です。
■来春できる大学院工学研究科では、どんなことを学べるのでしょうか。
工学部の学びの柱のひとつであるサステイナブル工学を基盤に、幅広い工学分野を横断的に学ぶことができます。また、複数の専門を身に付けることで、未来社会を支えるサステイナブル工学の全体像を見渡せるような人材を育成することが狙いです。
例えば、文部科学省は2003年頃に、これからの日本で求められる科学技術人材像は、π(パイ)型人材だと言っています。それまでの単一専門性に則ったI型人材やひとつの専門性の上に幅広い知識を積み上げるT型人材だけでは、世間の荒波や時代の潮流に流されてしまう恐れがあるので、2つの分野の専門を柱にして、その上に幅広い知識を重ねるπ(パイ)型人材が望ましいというわけです。ですが、何も専門性を2つに限る必要はありません。柱は多いほど安定しますからね。ですから本学の工学研究科は、化学と機械と電気という3本柱の鼎(かなえ)型人材を育てたいと考えています。その上に素材や技術など、幅広い知識を積み上げられるようにしていきます。私たちは、そういう能力を持つ人がサステイナブルな社会をつくろうという大きな流れを生み出すことに寄与できるのではないか、サステイナブルな社会づくりを支える人材となるのではないかと考えています。
もちろん、サステイナブル工学は新しい分野ですから、これは世界でも類を見ない初めての試みです。ですから、私たち教員も手探りの部分が多々ありますが、それをつくり上げる人材を育てることが、本学の工学研究科の意義だと思っています。そのため、カリキュラムも非常に特徴あるものになっています。
■具体的には、どんな特徴があるのでしょうか。
工学研究科に入った学生は、自身の専門に関わらず、それ以外の分野も履修しなければ卒業できないカリキュラムになっています。授業科目は概論と特論に分かれていて、自分の専門分野は特論で専門性を深めることができ、他分野については概論を学んで下支えとする形で学修を進めていきます。概論というのは、それを専門としない人が聞いても理解を深められる入門的な内容ですが、最低限、学部で習うレベルのことは理解できて、勉強の仕方がわかるような講義を用意しています。
また、科目全体としては、総合科目と専門科目に分かれています。総合科目には「サステイナブル工学概論」「サステイナブルマニファクチャリング特論」など、サステイナブル工学に関わる講義が用意されています。そのほか、「学外研修プログラム」という非常に実学的なものもあります。これは企業や学外の研究室などへ行って、さまざまな経験を積むことで見聞を広め、それによってサステイナブル工学の理解をさらに深めようというもので、本学工学部のコーオプ教育の大学院版と言ったところです。一方、専門科目では、各工学分野の概論、特論が用意されていて、最初に申し上げたように、必要な単位を取得するには自分の専門以外の講義も取らないといけない仕組みになっています。
■大学院進学において重要なことは何だと思いますか? また、本学ではどんなサポートが受けられますか。
大学院進学で最も重要なことは、自分に実力をつけたい、学びたいという学生の意欲だと思います。最初に触れたように、大学院は学部時代やそれ以前の中高時代の学びとは、まったく違う世界になります。中高時代は、成績を上げるための勉強がメインですし、高い偏差値の大学に入ることが目標だった人も多いと思います。また、学部時代は、卒業のための単位取得が主な目的だったかと思います。そういう意味では、“肩書き”を得るための学びだったわけですが、大学院はそうではありません。自ら学びたいという意欲がなければ、先に進めないのです。そこは覚悟をもって、進学していただきたいと思います。
他方、学費の心配もあると思います。本学は私立大学ですから国立大学と比較すると額面上、学費は高いです。しかし、それを補う奨学金制度が非常に充実しています。またTA(Teaching Assistant)制度もあり、講義や実験の補助業務を担うことで手当てが支給されます。これらを活用すれば、経済的な負担はかなり軽くできますよ。
■最後に受験生・高校生にメッセージをお願いします。
大学院工学研究科は、オンリーワンの大学院です。本学の大学院でしか学べないサステイナブル工学を学べるチャンスがここにあります。今日お話したように、サステイナブル工学は芽が出て、ようやく本葉が出始めたくらいの新しい分野です。ですから、工学研究科で学び、自らを鍛えることは、まだ定まっていないサステイナブル工学分野の壁を開拓して拡げていくという事業に参加することでもあると言えます。その活動を通して、十分に実力を身に付けられますし、その力を発揮するチャンスが存分にあると思います。
色々と話しましたが、つまりは「サステイナブル工学をするなら、大学院に行かなければもったいないぞ!」ということです(笑)。ぜひ、早い段階から、大学院進学を検討してみてください。
■工学研究科 サステイナブル工学専攻WEB:
https://www.teu.ac.jp/grad/eng/index.html
・次回は8月31日に配信予定です