大学の学びはこんなに面白い

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ブロックチェーンとAIを融合させて、社会に役立つ面白いことを創り出そうと考えています。

2018年8月31日掲出

コンピュータサイエンス学部 亀田弘之 教授

杉山友康 教授

 コンピュータサイエンス学部では、先進AI分科会を設けて、AIの応用研究に着手しています。今回は、同学部の亀田先生が中心となって取り組んでいるAIの研究について、詳しく伺いました。

■先進AI分科会で、先生が中心となって進めている研究についてお聞かせください。

 「スマートブロックチェーンの実現と応用」というテーマで、ブロックチェーンとAIを融合させて、何か社会の役に立つ、面白いことを実現しようと取り組んでいます。
 高校生・受験生の皆さんは、ブロックチェーンという言葉を耳にしたことがないかもしれませんが、これは少し前にニュースなどで取り上げられていた“ビットコイン”、いわゆる仮想通貨に使われている技術です。ブロックチェーンの特徴としては、電子化された価値ある資産が誰から誰に所有権が移ったのかといった情報をきちんと記録・管理でき、その情報をみんなで共有できるうえに確認もできて、改ざんすることが非常に難しいので信用がおけるという技術になります。また、バージョンが1.0から現状3.0まであって、簡単に言うと、ビットコインなどの仮想通貨に使われているのが1.0です。そして、ブロックチェーンを仮想通貨以外で使おうというのが2.0。例えば、アメリカのマサチューセッツ工科大学では、大学のオンライン授業で活用されています。ブロックチェーンを使って、誰がいつ、どこの大学でどの単位を取ったかを、いつでもだれでも確認できるようになっていて、単位を取ったことを簡単に証明できるわけです。それから3.0になると、スマートコントラクト、つまり契約が自動的にできるような仕様になっています。それを色々なことに応用しようと、今、世界中で実証実験が進められています。私たちも、このブロックチェーン3.0の技術を対象に研究を進めています。

■具体的には、どんなことに取り組んでいるのですか?

 今、少しずつ進めているのが、AIが学習するために使用するビッグデータの信ぴょう性を保証することに、ブロックチェーンの技術を用いる研究です。AIのディープラーニング(深層学習)はビッグデータに基づいていて、そこから色々な知見を見出したり事の真偽を判断したりしていきます。しかし、そのAIの学習素材であるデータが本当に正しいのかと言われたときに、なかなか保証しにくいところがあります。そこをきちんと保証するのに、ブロックチェーンが使えないだろうかという発想です。
 世の中にはウィキペディア等を含め、色々な情報が溢れていますが、何が本当で何が嘘か、わかりませんよね。このまま放っておくと、間違った情報からAIが判断してしまうという怖さもあるわけです。もちろん、AIの言うこともそれなりに正しいのだとは思いますが、人間がそこで思考することを止めてしまっているので、そういう意味では危険な世の中になりつつあるのかなと思っています。ですから少なくとも、AIの学習に使ったデータくらいは、何が正しいかを確かめられるようにしておこうということです。

■今後、この研究をどう展開させていこうとお考えですか?

 今は、先程お話しした研究を足掛かりとして進めながら、ブロックチェーンとAIで何ができるのか、本学として何ができるのかを一生懸命、考えているところです。ただ、方向性としては、もう少し社会システムに関わる部分の研究をしていきたいと思っています。例えば、「フレンドリーAI」というキーワードがあります。昔のAIの賢さ、頭の良さは、難しい数学の問題がさっと解けるとかチェスの名人より強いといった方向で開発されていました。その後、私の研究室でも取り組んでいたのですが、人の気持ちがわかる、共感できるという方向の研究が進んできています。コンピュータであるAIが不得意なもののひとつに、雑談があると言われています。人間は誰でも雑談ができますよね。そういう人間が普通にしていることが、AIにはできません。その理由は社会脳(ソーシャルブレイン)がないからだと言われてきました。そういうことも含めて、AIの研究が進んできています。
 これからのAIは、社会に深くかかわっていきますから、そういうフレンドリーさ、ユーザー一人ひとりに合わせたサービス、ユーザーに寄り添ったサービスを提供できることが大事になってきます。というのも社会を構成する人々の価値観は、本当にさまざまだからです。例えば、旅行では目的地に早く着くことが大事なのか、途中を楽しみながら行くことが大事なのか、何を大事にするかは人それぞれに価値観があります。従来のAIでは、1日でも1秒でも早く到着することが良い、エネルギーを大量に使ってもOKという答えを出したと思いますが、これからはそうではない、一人ひとりの価値観に合わせたサービスができるフレンドリーAIが出てくるだろうと思います。それとブロックチェーンを融合させることができれば、社会システムはがらりと変わる可能性があります。それゆえに、社会システム自体をきちんと考えて、それを取り込んだ研究にしなければいけないと思っています。そこが難しいところです。
 ちょっと大きな話になってしまいましたが、あくまでも大学内での研究なので、まずは本学のキャンパスをAIやブロックチェーンの技術でスマートキャンパスにできないかと考えています。もちろん全てをブロックチェーン化する必要はありませんが、単位の取得など色々な部分のスマート化に使えると良いのではないかと考えています。

■受験生・高校生にメッセージをお願いします。

 世の中の変化は、速くて激しいですから、今のうちに学び方をきちんと身に付けましょう。というのも5年後、10年後には、それまで自分が学んでいないことを学ばなければならない状況がきっと出てきます。そのときに必要となるのが、それまでに身に付けた勉強の仕方、学び方です。ですから好きな科目だけでなく、苦手な科目も自分なりに勉強してください。その経験が、後できっと役に立ちます。
 私の場合、今はAIとブロックチェーンの研究をするために、社会契約や社会システムの勉強をしていますし、応用生物学部の杉山先生と取り組んでいるAI関連の研究のために、生命科学の勉強もしています。生命科学は勉強してもわからなくて、どこからわからないのかを遡ると、高校の生物にまで戻りました(笑)。ですが、受験勉強や大学時代に勉強の仕方を身に付けた経験があるので、それに照らし合わせながら、今、目の前にある課題にどうチャレンジしていこうかという道筋が立てられます。
 あとは、自分のしたいことと直接関係ないことでも、将来、関係してくることが多々あるので、少なくとも高校時代に教わることは基礎ですから、きちんと勉強しておいてほしいですね。また、これからの技術は、技術のための技術ではなく、人々が幸せになるための技術として発展していきます。情報システムやコンピュータの勉強も大切ですが、社会システムについてもそれなりに知らないと立ち行きません。世の中には色々な人がいて、色々なことを考えていますから、そういう多様な社会に対して、自分がどんな役に立てるのかということを、今のうちから少しずつ考えていってほしいと思います。

■コンピュータサイエンス学部WEB:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/cs/index.html

・次回は9月10日に配信予定です