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遺伝子の働きを制御するスイッチに着目した、がん診断技術や新薬開発につながる研究をしています

2018年11月9日掲出

応用生物学部 吉田 亘 講師

吉田 亘講師

 DNAを対象に、がんなどの病気の簡易診断技術や新薬開発のための基礎研究に取り組んでいる吉田先生。今回は、具体的な研究内容についてお聞きしました。

■先生の研究室では、どのような研究に取り組んでいるのですか?

 この研究室では、DNAを対象にがんなどの病気の新しい診断方法や抗がん剤などの新薬をつくる研究をしています。具体的には、遺伝子の機能が発現するかしないか、つまりオン・オフのスイッチに着目していて、ひとつはメチル化、そしてもう一つがDNAの四重鎖構造になります。
 まずは、メチル化の研究の話からしましょう。遺伝子とは、簡単に言えばヒトのカラダを形成するパーツをつくるための設計図で、約2万2000個あるとされています。それをもとにカラダのパーツをつくるのですが、1つの組織で2万2000個すべての遺伝子を使うわけではなく、心臓はその内の6000個を使う、脳なら8000個使うというように、使う遺伝子は違っています。だからこそ、異なる機能を持った組織になるのです。
 その使う・使わないの切り替えスイッチの役割をしているもののひとつが、メチル化です。これはDNAを構成する化合物A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)のうち、Cにメチル基(CH3)が付くことを言います。メチル化されている、つまりメチル基がCに付いていればスイッチオフで、その遺伝子は働いていない状態になります。逆にメチル基がCに付いていなければ、その遺伝子は働いている状態になります。

 この遺伝子のスイッチは、いろいろな病気に関係していると考えられるのですが、例えばがん細胞の場合、このスイッチの状態が異常になっているものがあります。通常はオフでないといけない遺伝子の働きがオンになっていて、がん化している場合があるわけです。逆にいうと、このスイッチの状態を調べればがん細胞か正常な細胞か調べることができます。そのため、このスイッチの異常を簡単に調べることのできる方法を開発する研究に取り組んでいます。
 この研究室で開発した方法の代表的な例では、ヒトのタンパク質とホタルの持つ光るタンパク質を遺伝子工学的に組み合わせて、メチル化DNAに結合する人工タンパク質をつくり、それで遺伝子スイッチの異常を検出しようというものがあります。この人工タンパク質をDNAに混ぜると、DNAのメチル基部分に結合して、発光の色が変化するというものです。この方法がうまくいったので、今後はメチル基以外のDNA修飾を同じような方法で検出できないかと研究を進めています。

■では、「DNAの四重鎖構造」の研究は、どのようなものなのですか?

 DNAが二重らせん構造だということは、ご存知かもしれませんが、実はそれ以外の構造も形成しています。通常はAとT、CとGが水素結合しますが、GとGとGとGが水素結合すると、特殊な四重鎖構造になる場合があって、これも遺伝子のスイッチとしての働きがあることが分かっています。また、この四重鎖構造は染色体の末端にあることは分かっていましたが、それ以外で30億塩基あるヒトのゲノム内のどこにあるのかは分かっていませんでした。そこでスイッチとなりうる四重鎖構造のある場所を探すところから研究してみようと始めたのです。
 これに関しては、共同研究先の先生がつくった四重鎖構造に結合する化合物を利用して、それが結合すると四重鎖構造が検出されないという特殊な方法で解析することに成功しました。結果、約2万2000個の遺伝子の内3766個に、スイッチになり得る四重鎖構造が密に存在することが分かりました。今度はそこに結合する分子を見つけようと研究を進めているところです。これがうまくいけば、遺伝子に直接作用する新薬開発につながるかもしれません。

■先生がこの分野に興味を持ったきっかけは何だったのですか? また、研究のおもしろさとは?

 私が高校生のときは、今のようにインターネットもなく情報量の少ない時代でしたし、当時のバイオ分野といえば、流行前夜という感じで、それほど話題になっていませんでした。そんなとき、大学案内のパンフレットに二重らせん構造やDNAのことが載っていて、興味を持ったのです。
 研究者の道へと進むことにしたのは、大学の研究室で研究を始めたら、どんどん面白くなっていったからです。当時はDNAを使って病気の目印となる分子を測定する研究をしていました。その後、国立成育医療研究センターで研究員をする機会に恵まれて、受精卵から細胞が分裂していくときにDNAのメチル化が重要な役割を果たすということを学びました。そこから現在の研究テーマに発展してきたという流れです。
 研究が面白いと思うのは、やはり新しい結果が出たときですね。それが自分の思い描いていた仮説通りにいったときは、うれしいです。また、実験はそう簡単にうまくいきませんが、何が課題なのかと研究室のメンバーと話し合っているときが、一番、楽しい時間だと思います。

■今後の展望をお聞かせください。

 メチル化の研究では、究極的な着地点として、例えば微量の血液を試薬に入れて発光した色をスマートフォンで撮影するだけでがん診断ができないかと思っています。もちろん、実用化にはまだ課題が山積していますが、将来、そういう方向に持っていけたらと考えています。また、この研究に限らず、何か研究成果を実用化して、社会貢献したいという思いはありますね。
 それから研究室の学生には、答えのわからない様々な課題を解決する力を身につけて、卒業後、自立して生きて行ってほしいと思っています。そういう意味では、誰も答えを知らないことに挑戦する卒業研究は、社会に出て役立つ力を養う教育として最適ではないかと思います。あとは、この研究室から研究者になる人が出てきてくれたら、うれしいですね。

■受験生・高校生にメッセージをお願いします。

 私が本学の応用生物学部に赴任してきたのは、5年前になります。その時、一番驚いたのは、教員のすばらしさです。本学部は教員同士の仲が良く、コミュニケーションもしっかり取れ、学生の面倒見の良い先生が揃っています。
 また、共同で使える研究設備が充実している点も強みです。人と設備という研究と教育に欠かせない環境が整っているので、学生の学びたいことを力強くサポートできる学部だということを伝えたいですね。

・次回は11月22日に配信予定です