IoTやAIの技術を応用したさまざまな研究に、学生たちがチャレンジしています!
メディア学部 寺澤卓也 准教授
子どもの頃から電気回路に興味を持ち、学生の時はコンピュータアーキテクチャ分野を専門に研究されていた寺澤先生。本学では研究分野をコンピュータネットワークにシフトし、幅広い研究テーマに取り組んでいます。今回は、その中でも近年、話題のIoTやAIに関する研究について伺いました。
■先生の研究室では、どのような研究に取り組んでいるのですか?
コンピュータネットワークやその応用として、色々な研究を手がけているのですが、今日はIoT(Internet of Things)とAI(人工知能)に関連した研究を紹介しようと思います。
IoTと聞くと、“モノのインターネット”ということで、家庭内のスマート家電同士をネットでつなげてコントロールするというイメージが強いと思いますが、それに限らず、例えばIoT技術を使った農業支援というものも良く知られています。
これは世界中で研究が進められているテーマで、例えば、土壌の様子、気温、湿度、日照の様子などのデータをセンサで取得し、それに応じて水をやるタイミングや日照の調整といった管理をしようというもので、すでに実用化もされています。
当研究室では、そんなふうにIoTで集めたデータを使って、新しく農業を始めようという人のサポートができないかと考えました。新人の農家さんはベテラン農家のように最初からうまく作物を育てることはできませんよね。そのため、これまでは時間をかけてノウハウをベテランから教わるというパターンが主流でした。でも、ベテランの人の畑と自分の畑の違いをデータで比較できれば、新人でもある程度、作物を上手に育てられるのではないのかと考えたわけです。そこで実際にプランターを用意して作物を育てながら土壌や日照の様子をセンサで計測し、そのデータをインターネットでクラウドというサービスに集めて分析・可視化することで、データとしてどのくらいわかるのかを明らかにしようと2016年度に学生が取り組みました。こういうことが実現できれば、日本の農家の高齢化問題の解決策として、若い労働力の確保や作業負荷を低減させることも可能だろうと思います。
センサー・情報収集用サーバー間の検証
取得データ
取得データ
■では、AIに関する研究は、どのようなものなのでしょうか?
AIの分野は非常に幅広いのですが、そのひとつに機械学習というものがあります。近年、将棋や囲碁の棋士がAIに負けたという話題で非常にインパクトの大きかった分野です。今、この研究室でも、その分野の研究に取り組んでいます。
例えば、正確には機械学習で使われるライブラリの一部を利用して取り組んでいるので、明確に機械学習をさせているわけではありませんが、幅広く言えばAI分野にある“ベイズ理論”というものを使って、キーボードの入力間違いを減らす研究に取り組んでいる学生がいます。キー入力の間違いには打つ人の一種の癖があり、それを捉えることで誤入力を減らせるのではないかという試みです。今回は、特定のキーをよく打ち間違える場合、その前に打ったキーとの関係で間違いが起きるのではないかという仮説を立てて検証しました。
具体的には、学生7名に一定時間、同じ文章を入力してもらい、どんな要素で間違えるのかを捉えようと実験しました。それにより、各人がどのキーの後に打ち間違える確率が高いのかという計算をします。それからそれぞれに以前書いたレポートなど長めの文章を用意してもらって、それに対して打ち間違いが起きる確率の高かったところをチェックして、本当に間違えているのかどうかを検討してみたのです。結果、文章の推敲をしているかいないかにもよるので、相当ばらつきはありましたが、うまくいったケースでは、高確率で打ち間違いを見つけることができました。
研究室では、このほかにも、実際に機械学習をさせるタイプの研究にも取り組んでいます。
■どのようなところにコンピュータネットワークの研究の面白さを感じますか?
例えば、今、みなさんが普通にホームページを見ているWWW(World Wide Web)という仕組みは、私の学生時代に発明されたものです。でも現在のように発展するとは、当時、思ってもいませんでした。ちょうど私が教員として働き始めるのと同時期に発展が始まったので、その様子を追いかけるような形で研究してきたことになります。そういう技術の発展と並走して研究して来れたこと自体面白いですし、「こんなことを考える人がいるんだ!」と思うようなことが次々に出てくる世界ですから、そういうところも面白いですね。
■今後の展望をお聞かせください。
当面は、今日お話ししたAIやIoTの研究を続けたいと思っています。この研究室では問題発見・解決をしたいということで研究テーマを決めていますが、そういう意味ではまだまだAI関係のものをさまざまな問題解決の道具にする余地はありそうです。
また、学生にはこうした技術を取り巻く世の中の動きを、授業や研究を通して実感してもらえたらと思っています。例えば、コンビニで買い物をするとPOSのデータとして購入した商品の情報が集められていますし、先ほどの農業のセンサデータも全部を集めることができれば、ものすごい量になります。その巨大なデータ(ビッグデータ)をどう使うかがこれまでは難しかったわけですが、今は処理技術も発展し、さらにAIを用いようという流れになっています。AIには大量のデータの分類やそれを使った予測ができる可能性があるからです。
学生にはこうした世の中の動きや、普段の生活の裏で情報が集められ、利用されることが社会の仕組みとなりつつあるといったことに目を向け、そういう視点で物事を見られるようになってほしいと思います。
■受験生・高校生へメッセージをお願いします。
まず今、受験真っただ中の方は、受験をがんばってください。そして来年受験を控えている新高校3年生は、これから大学選びの時期が始まります。自分のしたいことが明確な人は、それに沿って大学をよく調べて、進路を選んでください。一方、高校3年生になったからといって、したいことがはっきりしている人ばかりではないと思います。そういう人は、まず自分は何に興味があるのかを探るところから始めてください。興味のあることでないと、続かないですからね。
そういう意味では、本学のメディア学部はかなり幅広い分野をカバーしているので、興味のあることを見つけやすいのではないかと思います。1つの学部の中にいろいろな分野の要素が揃っているのがメディア学部の特長で、ゲーム、アニメから、広告、教育分野、コンピュータネットワークなどの技術的な研究もできます。また大学に入って興味の方向が変わっても、多様な分野を扱っているので、いくらでもその受け皿は用意されています。いろいろな世界への入口がたくさんあるメディア学部で、ぜひ面白い研究にチャレンジしてください。
■メディア学部WEB:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/media/index.html
・次回は3月9日に配信予定です。