社会や地域の支援活動を通じて学ぶ「サービスラーニング実習」を充実させ、学生が自ら問題発見・解決する力を育みます
教養学環 佐久間 裕司 教授
東京工科大学では、2015年に国連が採択した17のゴール、169のターゲットから成る持続可能な開発目標「SDGs(エス・ディ・ジーズ)」を意識した教育研究を推進しています。
今回は教養学環における取り組みを、佐久間先生に伺いました。
■教養学環におけるSDGsの取り組みについてお聞かせください。
東京工科大学では、実学主義教育の一環として、国際基準の教養と語学力、社会人基礎力を育む教育組織「教養学環」を設置し、さまざまな教養教育科目を用意しています。その中のひとつに、「サービスラーニング(SL)実習」という奉仕や任務(サービス)を通して、主体性や協調性、責任感、コミュニケーション能力などを総合的に学ぶフィールドワーク学修があります。この実習自体は、1999年のメディア学部開設当時から続いてきたものですから、SDGsを意識して設置された科目ではありません。ですが、この実習には、同じ地球上に住む人間ができるだけ均等な教育や経済を享受できるように支援していこうというSDGsの根底にある理念に通じるものがあるということで、教養学環では今後、「SL実習」とSDGsを関連づけながら、一層、充実させていこうと進めています。
「SL実習」では、どのようなことをするのですか?
大きく分類すると、宿泊系、非宿泊系、自己開拓系のプログラムがあり、学生は体験したいプログラムに申し込んで履修します。例えば、宿泊系プログラムでは、新潟県佐渡市の国中と岩首の2か所で取り組んでいるプログラムがあります。国中地区では、天然記念物のトキの餌場づくりなどに取り組んでいて、11年ほど続いています。トキが帰巣する途中に通る休耕田の草を刈ったり、餌場となる水辺を整備したりというのが主な活動内容です。1年に1回、履修した学生が8月下旬に4泊5日で実習に行っています。
また岩首地区では、竹林整備に取り組んでいます。整備で伐採した竹を活用して行われる「竹灯りの集い」というイベントがあり、そのお手伝いもしています。これらの取り組みは、SDGs目標のNO.15 「陸の豊かさを守ろう」に該当すると言えますね。
他にも例えば地産地消を推進している長野県上田市で、有機農業と6次産業体験をするプログラムがあります。収穫を手伝ったり、収穫した野菜を加工して販売したりします。これはSDGs目標NO.12「つくる責任 つかう責任」に該当する取り組みです。
また、非宿泊系プログラムでは、神奈川県川崎市での障がい者就労支援プログラムがあります。これはダンウェイという会社が開発した、障がい者がホームページ作成などを簡単にできるソフト「ICT治具」を使えるように、障がい者に使い方を教えたりサポートしたりする活動です。学生は現場に入る前に研修を受け、障がい者との関わり方などを学んでから実習に参加しています。このプログラムは開始して4年目になりますが、学生自身、障がい者に対する偏見が取れ、自分たちがもっとしっかりしようという意識が芽生えて、非常に成長できる良いプログラムだと思います。これはSDGs目標NO.3「すべての人に健康と福祉を」に当てはまる取り組みです。
自己開拓系プログラムというのは、学生の個人的な活動をSLとして認めるものです。学生が自分で活動を探してきて、大学にSL単位認定の申請を出します。その内容を大学側で審査して、活動内容などがSLにふさわしいものであれば認定しています。最近では東日本大震災での東北支援や、東京都町田市在住の学生が町田市の成人式実行委員を務め、企画から関わったボランティア活動を認定しました。
■「SL実習」では、今後、どのような展開を考えていますか?
先程、少しお話ししましたが、学生がより深く学べるよう、2019年度から新しいカリキュラムをスタートさせます。というのも、これまでの「SL実習」(「SLⅠ」「SLⅡ」)は、用意されたプログラムの中から選んで参加する体験型ですから、体験を通して学生が感じ取っていく程度でしかありませんでした。しかし、そこで終わってしまうのはもったいないですから、より教育的、発展的なものとするために、来年度からは科目数を増やし、その先に演習型の実習を設けていきます。
具体的には、人文社会系科目として「地域共生論」という講義を設け、これを受講して単位を取得した人は、2年後期の「SLⅢ」、3年前期の「SLⅣ」を履修することができるという形にします。「SLⅢ」「SLⅣ」は、講義を受け、自ら実習の計画を立て、現地でどういう支援ができるかを自分で考えて、実際に取り組むという演習型の実習です。なぜ地域にその問題が起きているのかという問題発見や、それに対して自分は何ができるか、どう関わるのかを考えるといった形で進め、将来は自らがボランティア活動に勤しめるような学生を育てようという目標で進めています。そうすることで、リーダーシップを養ってもらいたいと考えています。また、今後は講義を通してSDGsの精神のようなものも学んでいける形にしていく予定です。
■先生ご自身は、どのようなことを教えているのですか?
「SL実習」以外では、スポーツ系の講義と実技科目を担当しています。「心と健康」という講義では、心身の健康を維持管理するための正しい知識や態度について幅広く取り上げています。また、実技で教えているのは、テニスとゴルフです。さらに、学外実習でゴルフやスキーをする「集中実技」も担当しています。スキーは2月中旬に群馬県の万座温泉スキー場へ行き、スキーの技術習得や冬山の楽しみ方を知ることに加え、集団生活や学年・学部・学科を越えた交流を経験してもらいます。ゴルフは9月上旬に実習へ行きますが、こちらも技術習得と集団生活を体験することなどが主な目的です。
実技でも実習でも、スポーツを通して技術だけでなく、時間を守るといった集団生活のルールや協調性を学生に身に付けてもらいたいと思っています。
■最後に受験生・高校生へメッセージをお願いします。
「実学主義」を掲げる東京工科大学では、机上の勉強だけでなく、実際にその世界に入って実体験を通して学ぶことが、大きな実りになると考えています。ですから本学には、「SL実習」や「海外研修」や「海外語学研修」などの学外実習といった実体験ができる機会をたくさん用意しています。その中で自分の専門性をどう活かしていくのか関連づけていくことは、結果、学生の創造力につながるのではないかと思います。みなさんも、大学生になったらぜひ、何にでも果敢に挑戦していってください。
サービスラーニング・海外プログラム・集中実技
・次回は1月25日に配信予定です