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研究の醍醐味は誰も知らないことの第一発見者になれること。それには宝探しに似た楽しさがあります!

2020年1月24日掲出

応用生物学部 岡田 麻衣子 助教

岡田 麻衣子 助教

 大学3年生で経験した実験をきっかけに研究の楽しさを知り、研究者の道を歩む決心をしたという岡田先生。学部時代は細胞が分裂する仕組みを、大学院では遺伝子の働きをオン・オフにする仕組みを研究し、現在は創薬につながる画期的な研究に取り組んでおられます。今回は現在、取り組んでいる研究についてお聞きしました。

■先生のご研究についてお聞かせください。

 私の専門は分子細胞生物学や分子内分泌学という分野で、細胞内のタンパク質分解や女性ホルモンに関する研究などに取り組んでいます。まずは「タンパク質分解を基盤とするがんの治療戦略の開発」という研究についてお話ししましょう。
 私たちの細胞内では様々な活動が行われていて、その実質的な機能を担っているのがタンパク質群です。一方で、これらのタンパク質が過剰量でも細胞に支障をきたすため、適切な量になるように適宜分解される必要があります。その仕組みはまだ不明点が多いのが現状です。そこでその解明の糸口として、タンパク質分解の一翼を担うプロテアソームに注目しました。プロテアソームは66個のタンパク質から構成されていて、それらが協力しながら機能する、巨大で緻密なタンパク質分解装置のことです。このプロテアソームは、がん細胞内で非常にたくさん発現するので、がん細胞の増殖や生存能に関わっていると知られています。このプロテアソームの活動を阻害すれば、がんの増殖が抑制できるということで、すでにそういう抗がん剤も存在しています。ところが、この抗がん剤がなぜか3割程度しか効かず、その理由はわかっていません。
 そもそもプロテアソームは非常に大型で、色々な部品から成り立っているため、どのようにその装置が稼働し、どうしたらその機能の効率が上がるのかといったことが、今までわかっていませんでした。ただ、最近になってプロテアソームの機能を制御するタンパク質、いわゆるプロテアソーム相互作用因子群(proteasome-interacting proteins)というものがいくつか発見され、それが新しいがん治療の創薬標的になるのではないかと注目されています。しかし、実際の細胞内にはプロテアソームの働きを制御する立役者は多数いると考えられるので、いくつかの因子だけでその機能制御を説明するには不十分です。そこで私はこのプロテアソーム相互作用因子群を網羅的に見つけることで、これまで謎だったタンパク質分解装置の制御の仕組みを明らかにし、それを新しいがん治療に結びつけたいと研究しています。
 もう少し身近なことに置き換えて説明すると、プロテアソームは粗大ごみを処理する仕組みと似ています。私たちが粗大ごみを捨てる際、自治体指定の粗大ごみシールを貼りますよね。そうするとそのシールを目印に清掃業者の方が粗大ごみを取りに来て、処分施設に持って行き、粗大ごみを分解する焼却炉に入れて処理します。この焼却炉がプロテアソームで、細胞内で不要になったタンパク質につける目印(粗大ごみシール)がユビキチンというタンパク質です。目印となるタンパク質は、ユビキチン以外にも様々な種類があり、それぞれ目印の意味は異なります。また、焼却炉はそれ単体では稼働できません。そこには焼却炉を稼働させる人、管理者、メンテナンスする人など、様々な人が役割を担っています。同様に細胞内でも様々な因子が役割分担してプロテアソームという焼却炉の稼働を手伝っていると思われますが、その仕組みは完全には解明されていません。しかし、その稼働を手伝っているのが、どうやらプロテアソーム相互作用因子群であることは明らかになりつつあります。
 現状、私の研究では候補となるプロテアソーム相互作用因子群を5~6個見つけることができ、それらの基礎的な機能は明らかにできています。ですから今後はこれらの因子を実際に新しい抗がん剤や抗がん剤の効果を予測する病理マーカーに応用する研究に力を入れていこうと考えています。

■他にはどんな研究例がありますか?

 お酒を飲まないのに脂肪肝や脂肪性肝炎になる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療薬を開発する国立感染症研究所を主体とする研究チームにおいて、核内受容体ネットワーク評価を担当しています。みなさんもウイルス性のC型肝炎という病気を耳にしたことがあると思います。この病気は血液を通してC型肝炎ウイルスに感染する病気で、昔は治らないものでしたが、今は良い薬が開発されて治る率が高くなっています。しかし、中には治りにくい難治性のC型肝炎もあります。また、ウイルス感染ではありませんが、最初に挙げたNAFLDも一部は肝硬変や肝がんに進行することがわかり、今後は世界的に問題になると注目されています。
 そもそも肝臓に肝炎ウイルスが感染すると、肝臓内にものすごく脂肪が溜まります。脂肪滴として脂肪が蓄積され、そこをベースにウイルスが増幅することがわかっているのです。そこで国立感染症研究所の研究チームの一員として、この脂肪滴をつくらないようにする薬をつくろうと取り組んできました。具体的には、ウイルスを増殖させない新薬につながるシーズを天然物のライブラリーから探索していたところ、真菌由来のネオエキヌリンBが発見されたのです。これを使うとウイルス感染後に脂肪の蓄積を抑制することがわかっています。その理由は、脂肪の蓄積に関わる肝臓X受容体にネオエキヌリンBが結合して機能を抑制するからです。それならば難治性C型肝炎だけでなく脂肪肝や脂肪の蓄積を特徴とするNAFLDの治療薬にもなるのではないかということで研究を進めています。
 私が担当する核内受容体ネットワーク評価についてですが、核内受容体とは先ほどの脂肪蓄積に関わる肝臓X受容体のことです。細胞内にはこうした核内受容体が48種類あることがわかっていて、これらが互いに関連して作用していると知られていますが、どう関連しているかはわかっていません。それを明らかにすることが課題のひとつです。また、この肝臓X受容体と似た構造の受容体に女性ホルモン受容体があります。NAFLDになる人は圧倒的に男性が多く、女性は少ないのですが、閉経後の女性は急増しています。つまり女性ホルモンが非常に関係していると予想できるのです。ですからネオエキヌリンBが肝臓X受容体を通して脂肪蓄積を抑制する仕組みを解明するほか、それと関連する女性ホルモン受容体にも着目して研究しています。
 

■研究の面白さとは、どんなところにあると思いますか?

 誰も知らなかったことの第一発見者になれるところですね。研究には、宝探しに似た楽しさがあります。高校までの勉強は「ここに宝が埋まっているので頑張って掘り起こしなさい」というスタイルだと思いますが、大学での研究は何が埋まっているかわからないものを初めて発掘するので、見つける過程も面白いですし、見つけられたらうれしいです。
 もちろんむやみに掘るのではなく、推理小説のように様々な情報から「ここに良いものが埋まっているのではないか」と仮説を立てて掘ってみます。思った通りのものが出てくるとうれしいですが、出てこないことも多々あります。そのときは、この推理では発見に行き着けないので視点を変えてみようと柔軟に考えていくのですが、それも楽しさのひとつです。

■学生にはどんな力を身に付けてほしいですか?

 学部で卒業する学生の場合、その後の進路は様々です。企業に勤めるといっても分野や職種がばらばらですから、どんな仕事にも共通する自主性と思考力を身に付けてほしいと思っています。会社に入ると自分で計画を立て、納期などの期日や自分の目標から逆算して自分で仕事を進めていきます。また、自分のプランを理解してもらい、よりよい内容になるようアドバイスをもらうには、プレゼンテーション能力も必要です。卒業研究を通して、そういう力を身に付けてほしいですね。

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 オープンキャンパスに参加してほしいと思います。私自身、本学に着任してすごく驚いたのが、八王子キャンパスの環境です。写真で見ても圧巻ですが、実際にここで過ごすと、すごく開放的な空間にいられるので、精神衛生的にも良いと思います。まずは、オープンキャンパスで校内に入ったときにどう感じるか、自分のインスピレーションを確かめに来てください。そういう感覚は、「この大学に行きたい」というモチベーションにつながると思います。また、本学は専門だけでなくICT教育など多彩な教育を行っているので、将来、活躍できる場も幅広いです。そういう教育面や就職のことも、ぜひオープンキャンパスで在学生に聞いてみてください。

・次回は2月14日に配信予定です