大学の学びはこんなに面白い

大学の学びはこんなに面白い

研究・教育紹介

東京工科大学 HOME> 大学の学びはこんなに面白い> 科学の知識や面白さを分かりやすく伝える力を養うプログラムが始まっています!

科学の知識や面白さを分かりやすく伝える力を養うプログラムが始まっています!

2021年8月27日掲出

工学部 応用化学科 高橋昌男 教授

工学部 応用化学科 高橋昌男 教授

東京工科大学では、革新的かつ実践的な教育活動の一環として、今年4月より各学部・学環における「戦略的教育プログラム」(第二期目)が始まりました。今回は工学部の取り組みについて、応用化学科の高橋先生にお聞きしました。

■工学部の戦略的教育プログラムについてお聞かせください。

 現在、工学部では2つの戦略的教育プログラムに取り組んでいます。その内のひとつが今回お話しする「サイエンスコミュニケーター育成支援教育プログラム」です。サイエンスコミュニケーターとは、科学に関する専門的な話を分かりやすく一般の人に説明し、分からないところがないかフィードバックを受けながら、理解してもらえるように話したり、科学の面白さを伝えたりする人のことを言います。研究者や技術者といった科学技術の専門家と一般の人との、言わば架け橋的な役割を担う人です。ただ、サイエンスコミュニケーターの採用を行っている企業や組織はまだ少ないため、ひとつの職業として成立しているものではありません。しかし、東京の日本科学未来館には科学コミュニケーターがいますし、日本サイエンスコミュニケーション協会という一般社団法人は2020年度からサイエンスコミュニケーション資格の認定をしています。また、科学がどんどん発展する今の時代、科学の知識やそれに対する理解・興味を、科学を専門としない一般の人にも広げていくという社会的なニーズは増えつつあります。
 では、この戦略的教育プログラムでの目的は何かというと、サイエンスコミュニケーターのように、工学部が専門とする科学やテクノロジーの情報や面白さについて、うまく一般の人に説明ができる、専門家と一般の人との間をつなぐ意識を持った学生を育てることです。工学部の機械工学科、電気電子工学科、応用化学科の3学科で協調しながら取り組み、学生の成長につなげていこうと考えています。

■具体的には、どのようなことに取り組むのですか?

 まずは工学部の学生が、このプログラムに興味を持たなければ何も始まりません。そこで学生が楽しい、面白いと思う実験や工作をテーマにしたコンテストを公募しようと計画しています。学生が科学を楽しいと思わなければ、その楽しさを人に伝えることはできませんからね。そういうテーマをもとに、実験の動画をつくってアップロードしてもらい、まずはそれらを学内限定で公開して、コンテストを開催しようと企画しています。工学部の学生は授業でも実験を多数経験しますが、そこで行う学生実験は、あくまでも学ぶ内容に沿って決められたテーマがあり、どうなるか結果がわかっていながら取り組むものです。逆にこのコンテストでは、学生が自分たちでしてみたいと思う、わくわくするような実験や材料合成、工作、モノづくりに、グループあるいは個人で取り組んでもらおうと考えています。事前に挙がっているいくつかのテーマに取り組んでも良いし、学生が自ら挑戦したい実験を考えて、取り組んでも構いません。
 例えば、本学には1年生対象の「フレッシャーズゼミ」という授業があり、応用化学科では数名ずつのチームにわかれて、学生たちの好きな実験を行い、その結果を発表するという取り組みを行っています。その中で、過酸化水素を分解して酸素を発生させ、そこに洗剤を入れておいて泡を噴出させるという実験に取り組んだチームがありました。例えば、その吹き出す泡の高さを競い合い、一番高く噴き上げて興味深い発表をしたグループを1位にするといった内容のコンテストがあっても面白いかもしれません。イメージとしては、YouTubeで公開されている、ちょっと面白そうな実験やでんじろう先生の実験ですね。あのようなことを学生たちにアイデアから考えてもらい、面白実験動画の作成に取り組んでもらいたいと思っています。そこで実験や科学の面白さを体験し、次はそれを人に伝え、指導できるようになってもらい、サイエンスコミュニケーターのような素養を身につけてもらおうという狙いです。
 実験場所は大学の施設を利用できますし、実験に必要な器具や試薬類もこのプログラムの予算に含まれているので、学生の負担はありません。また、大学3年生で研究室に所属してから使用するような、最先端の実験装置を使用する研究やサステイナブル工学素材の開発研究にも参加してもらおうと考えています。
 スケジュールとしては、夏休み期間が実験にチャレンジする良いタイミングだと思うので、夏休み中に取り組んでもらい、動画が完成すればアップロードしてもらおうと考えています。動画の撮り方や見せ方の工夫はもちろん、実験内容や結果の分析などをきちんと説明してもらう、まさしくサイエンスコミュニケーションの部分は入れてもらわなければなりません。そういうところから、他者に実験内容などを分かりやすく説明する経験をしてもらいます。また、そこで面白い実験テーマがあれば、高大連携やオープンキャンパスで高校生への指導を補助するTA(Teaching Assistant)やメンター(助言者)の役割もしてもらおうと思っています。

■今回のプログラムの発案には、どのような背景があったのですか?

 もともとは、学生が面白いと思う実験にどんどん取り組んでもらって、「実験って楽しい!」という体験をしてもらいたいというところが発端です。繰り返しになりますが、学生は大学の授業で多くの実験を経験します。しかし、その実験のテーマは、すでに答えがわかっているものです。逆に言えば、「なぜこうなるの?」「これは何だろう?」という疑問や不思議さ、興味から始まるものや「面白そうだからしてみたい!」というテーマは、なかなか学生実験では取り上げられないのです。ですが工学部に入ってくる学生は、実験や工作が好きな人が多いので、当然、そういう実験をしてみたいと思っている人も多いはずです。そこで課外活動的にそれを実現できないだろうかと考えました。また、「面白そう!」とか「なぜ?」という部分は、卒業研究にもつながることですから、大事にしたいと思っています。
 こういう思いを最初の核として、そこから戦略的教育プログラムの題材として、今の時代に求められているサイエンスコミュニケーターにつなげ、そういう意識を学生に育むプログラムのテーマとなったのです。

■今後の展望をお聞かせください。

 この夏休みに募集を開始してコンテストを行い、そこに参加してくれた学生には、オープンキャンパスでのメンターや私たち教員が高校等へ出張講義に行くときにTAで参加してもらいます。今は新型コロナウイルス感染症の影響でできていませんが、高校生に本学へ来てもらい、実験を体験してもらう際の実験テーマを考えてもらい、その実験でのTAや補助的な役割として高校生への指導もお願いしたいと考えています。また一昨年には、八王子市教育委員会からの提案で、八王子近隣の小・中学校生を対象に大学で実験をするという企画がありました。残念ながらこちらもコロナ禍で継続していませんが、今後はそういうところでも本学部の学生が活躍してくれるだろうと期待しています。
 さらには、研究活動におけるメンターの役割も担ってほしいと思っています。いわゆるSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に認定された高校は、高校生でも研究活動に取り組みます。そういうところで高校生にアドバイスするメンターの役割ができる学生を育てたいですね。SSHの高校生はかなり先端的な研究をしますから、大学にしかないような実験の設備や機器を使用しに大学へやって来ることもあります。そのときに、本学部の学生が付き添い、指導するというところまで高めていきたいと思っています。人に説明したり教えたりすることで、自分自身の理解が深まる面もありますから、そういう経験を通して学生に一層、成長していってもらいたいのです。
 また、今夏から始めるコンテストは毎年開催して、参加者数を少しずつ増やすように工夫していくことも課題のひとつです。最終年度の目標としては、学内イベントとして始めたこのコンテストを、学外へ広げたいと考えています。昨年度までの戦略的教育プログラムに、機械工学科が中心となって取り組んだロボコンへの挑戦がありましたが、そういう“コンテストに挑戦する”というキーワードで、多くの学生が集まりました。一方、実験や工作系のコンテストにどんなものがあるのかというと、案外少ないのです。それならば、東京工科大学からつくれば良いのではないかと考えました。まずは学内でコンテストを始めて、それを八王子市近郊の大学などにも募集をかけるなどオープンにしていき、徐々にその範囲を広げていきたいという将来的な野望を持っています。

■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 東京工科大学の工学部には、最先端の研究設備が揃っています。そのような施設を使って、自分たちが面白いと思うことや興味のあるテーマのさまざまな実験・工作に挑戦することができます。実験や工作に興味がある皆さん、ぜひ本学の工学部に入って、色々なコンテンツや未来につながるような新素材を開発してみませんか?

■工学部応用化学科WEB:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/eng/ac.html