大学の学びはこんなに面白い

大学の学びはこんなに面白い

研究・教育紹介

東京工科大学 HOME> 大学の学びはこんなに面白い> デジタル技術を使って「面白い」「すごい」と言われる作品づくりを経験しよう!

デジタル技術を使って「面白い」「すごい」と言われる作品づくりを経験しよう!

2021年10月8日掲出

メディア学部 メディア技術コース 太田高志 教授 羽田久一 教授

東京工科大学では、革新的かつ実践的な教育活動の一環として、今年4月より各学部・学環における「戦略的教育プログラム」(第二期目)が始まっています。今回は、メディア学部の取り組みについて、太田先生と羽田先生にお聞きしました。

太田高志 教授(写真左)、羽田久一 教授(写真右)

■メディア学部で取り組んでいる「戦略的教育プログラム」についてお聞かせください。

太田高志先生(以下、太田):メディア学部では「戦略的教育プログラム」のひとつとして、「デジタル技術を用いた作品制作による統合的なプロジェクト推進能力育成」というプログラムに取り組んでいます。簡単に説明すると、センシング、AI、ウェブ技術、VR、AR、 デジタルファブリケーション、プロジェクションマッピングといったデジタル技術を利用して、1~3年生の学生がアートやエンターテインメント、サービス、アプリなどの作品をつくるプロジェクトに取り組むというものです。作品の分野は限定せず、自由に発想して良いことにしますが、「面白い」「すごい」と評価されるような作品をつくることを目標とします。また、外部発表を想定して作品の完成度を上げることや、プレゼンテーションの工夫も学んでもらい、総合的に新しいアイデアの提案・実現ができる人を育成することを目的としています。
 当初は学生に「何か面白いことを考えてみよう」と投げかける想定でしたが、「自由に考えて良い」というと、かえって何もアイデアが出てこないことが多いので、多少はテーマなどのガイド的なものを提示した方が良いだろうと考えています。例えば、壁にプロジェクションを投影して何かをするとか、3Dプリンターを使って何かをつくるというように。もちろん、学生に具体的なアイデアがある場合は、それを受け付けます。取り組み方もグループ、個人を問いません。大きな作品をつくるなら、グループで取り組まないと難しいので、メンバー集めも含めて学生自身に取り組んでもらいます。

■デジタル技術を用いたアートやエンターテインメント等の作品というのは、どのようなものを言うのでしょうか?

太田:例えば、チームラボが手掛ける体験型展示などが、イメージしやすいかもしれません。彼らのデジタルアート作品には、CGやプロジェクションマッピングなど、さまざまなデジタル技術が使われています。また、私の研究室や羽田先生の研究室でも、そうした先端的なデジタル技術をテーマにした研究を扱っています。
羽田久一先生(以下、羽田):私が担当する演習では、チームラボの展示のようなものを扱っています。ロゴやイラスト、写真などに動きや音を加えて動画にしたモーショングラフィックスやCGと、センサやモーター仕掛けで動くようなものを組み合わせた作品づくりに取り組んでいます。また、研究室では「楽しい」をテーマにエンターテインメントに寄与するテクノロジーの開発を行っていて、新しいデジタル技術を使ったデジタルアート作品を制作しています。例えば、「FLOW LIGHT: 風の流れを描く凧」。これは凧にLEDをつけて空を飛ばし、長時間露光でカメラ撮影するというものです。これを実現するには、プログラムを書いて、配線をして、実際に作品づくりとして写真を撮影して…ということを全て自分たちでする必要があります。

FLOW LIGHT: 風の流れを描く凧

 また、「Sootoid: 煤によるジェネラティブアート生成の試み」という作品では、ろうそくを機械で動かして、その煤で絵を描きました。ろうそくは風が吹くことで揺れるため、同じように動かしても全く同じ絵は描けないという試みです(画像)。今回の「戦略的教育プログラム」では、研究室に所属する以前の1~3年生を対象に、こういう作品をつくれる学生を育成できたらと思っています。

Sootoid: 煤によるジェネラティブアート生成の試み

太田:卒業研究では、作品を自由につくるといっても、どうしても研究的な要素を入れなければなりません。ですが今回のプログラムは、そういう研究的な視点での新規性に関係なく、単に作品として面白いものをつくってみようという主旨になります。ですから、今すでにある技術を使っても、どこかから仕組みを借りてきて作品をつくっても構いません。極力、枠に縛られず、自由に学生が作品づくりを経験できればと考えています。もちろん思い描いたものをつくるのに必要な技術は、自ら学んでもらわないといけません。必要な機材や場所は提供するので、自分で利用できるものはどんどん調べて使って、自分がつくりたいものをつくることで、こういう分野への関わり方の例をつくりたいと思っています。

■このプログラムを発案した背景には、どのようなことがあるのでしょうか?

太田:ひとつは、今年あった東京オリンピックやチームラボの展覧会、広告分野などで、デジタルの仕組みを使ったインタラクティブな作品がたくさん使われるようになっていることが挙げられます。メディア学部で扱うべき分野として、ゲームやアニメーションなどに加えて、新しいデジタル技術を使った作品制作も割と大きな対象として考える時期に来ているのではないかと感じています。
 また、メディア学部に来る学生の多くが、ゲームやアニメーション、放送、音響などを学びたいという希望で入ってきます。それらはいずれもプラットフォーム(土台となる環境)が確立されたもので、その土台のうえでコンテンツをつくりたいという考えの人が多いわけです。というのも高校生の場合、自分の知っているものの範囲内で進路を選ぶことがほとんどですから、すでに確立された分野で何かを実現したいという希望になるのは当然です。ただ、我々としては、我々としては、既存の土台の上だけでなく、自分で何か新しいことを考えられる人を育てたいという希望もありますし、ゲームやアニメなどと並ぶ大きな柱となるものを打ち立てて、メディア学部を目指す高校生の学びのターゲットにしてもらえるようにしたいという思いもあります。
 それから3つ目の理由としては、こうしたデジタル技術を用いた作品制作分野では、私の研究室でも羽田先生のところでも、卒業研究としては扱っていますが、その技術を利用して作品を考える、どういう表現をするかを追求するという部分は、今まで欠けていたように思います。プロジェクト演習でも簡単な作品制作には取り組んでいますが、この演習では電子工作、こちらの演習では広告に関するものというように、それぞれ分野をあえて狭めたなかでの取り組みですし、教員が題材や機材を事前に用意していますからね。そういう枠を取り払ったなかで、作品をつくって完成させるという経験ができるものが必要だろうと、今回、プログラムとして立ち上げました。
羽田:実際にモノをつくるということが、これから重要になってくると考えたときに、少しでもそういう経験を学生に積んでほしいのです。今までは、どうしても演習や卒業研究といった限られた中でしか作品制作に取り組む機会がなかったので、環境が十分には用意できていない面があったと言えます。今回のプログラムで、それをもう少し拡大できれば、より多くの学生がモノをつくる体験をできるようになります。そういう場をなるべく広く、学生に提供したいですね。

■具体的には、どのように進めていく予定でしょうか?

太田:現時点では、まだ決まっていませんが、とりあえずいくつかのプロジェクト演習や先端メディアゼミナールを基盤に進めていこうと考えています。まずは少しでも興味のある学生を集められるように、この分野に関連するプロジェクト演習での成果物を発信する展示会などを催して、この分野に興味のある人を徐々に増やすことをしなければなりません。今までのプロジェクト演習では、作品をつくって演習内で完結する形でしたが、外部の人に発表する、見せるということも含めて、学生に作品づくりを経験してもらうところから始めようと考えています。また、例えばプログラミングが苦手で、作品制作自体にはあまり興味がなくても、展示会の企画はしてみたいという学生がいるかもしれません。ですから作品づくりとその発表にまつわる周辺も含めて、関わる学生を少しずつ増やしていければと考えています。
 さらに、このプログラムではラボを用意して、それを学生に運営してもらおうと計画しています。制作環境を構築し、運営するという部分から学生が関わるようにしたいのです。どうしても演習や授業は、受け身になりがちです。そうではなく、作品をつくることに加えて、そのための環境運営まで、大きな括りで取り組んでもらいたいと考えています。
 ラボではデジタルファブリケーションといって、3Dプリンターやカッティングマシンなど、作品をつくるときに必要なツールを用意します。それらの使い方についても教員が教えるのではなく、指導役の学生が待機しているようにしたいです。今年度は、そのような学生を育てるといった基盤づくりに費やしたいと思っています。来年度以降、ラボの態勢を整えつつ、例えばウェブやYouTubeで作品を発信するなどして、少しずつこのプログラムに参加する学生を増やしていく予定です。
羽田:これまでは、1~3年生がデジタル技術を使った表現や作品づくりを経験する機会が少なかったのですが、今回のプログラムでそれを解消できるのではないかと思います。4年生になって卒業研究を始めると、研究室にある機材を使えますが、逆に言えば4年生になるまでは、それらに触れることがあまりありませんでした。ですから大学としては、低学年のうちからそういう機材に触れられる環境を提供することが必要だろうと思っています。

■今後の計画や展望をお聞かせください。

太田:今、お話ししたように、今年度は基盤づくりを始めます。来年度以降、ラボが運営できるようになると良いのですが、このコロナ禍で思うように進んでいません。軌道に乗るまでは、プロジェクト演習や先端メディアゼミナールといった授業の一環として行っていきますが、最終的にはそういう枠組みから脱して、ラボを中心に取り組んでいけたらと思っています。また、「デジタルコンテンツエキスポ」など、デジタルコンテンツ技術をテーマにした展示会などへの出展も目指していくつもりです。
羽田:授業という枠組みからどう切り離していくかは、難しいところですよね。授業にすると、単位を取りに来る学生が出てくるので、そうすると面白いものをつくるというより単位のために頑張るということになってしまいます。そうなると全体としてのクオリティが下がるというか、面白さが減ってくる可能性が高いです。ですから、ある意味、サークルの延長で楽しく取り組んでくれる学生を増やしていかなくてはいけないと思っています。結局、こういうプロジェクトは、手を動かした量だけが、最終的なクオリティに直結しています。長く時間をかけられた学生だけが、良いものをつくることができるのです。
太田:あとは、作品制作の経験を就職に結びつけていきたいと考えています。例えば、チームラボや1→10(ワントゥテン)など、デジタルコンテンツ技術に特化した企業もありますし、一般企業でもこういう手段を広告やキャンペーンで使うところが増えているので、そういうところが本学部の就職先として出てきてほしいですね。
それから、高校生や大学生自身も、大学は授業を受けに来るところだという認識の人が多いと思います。ですが大学は、それだけを提供する場ではありません。色々な専門分野を持つ教員とディスカッションするなど、自由に使えるのが大学です。最終的にそういうことが反映されたものを、ラボとしてつくることも目指したいです。

■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

羽田:見て面白いと思ったものは、自分でもつくれるようになるということを伝えたいですね。例えば、チームラボの作品を見たとき、一番目立つところはCGだと思います。ですが、実際はそれだけでなく、壁にタッチしたり、何かを読み込ませてそれを表示したりといった仕組みがあって、それによって実現しているわけです。ですからその技術がわかれば、つくることはできます。ゲームの世界もそうですよね。ゲームをする人とつくる人との間をきちんと埋めているのが、ゲーム教育です。同様に、こうしたデジタルコンテンツの展示も、見る人とつくる人の間を埋めることはできます。そういう間を埋めたいと思っている人、つまり見て感動して終わるのではなく、それをつくる側に回ってみたい人には、ぜひメディア学部に来てほしいです。
太田:メディア学部では、新しい表現形態を自分で切り開いていくような、自分で新しいモノをつくるという気概を持った人を大歓迎しています。何か面白いことやすごいことをして人を驚かせたり、自分自身をも感動させたりするようなことをやってみたいという方、ぜひ一緒に何かを創造しましょう!

■メディア学部WEB:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/media/