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人間力を向上させるサービスラーニング教育をさらに充実させていきます!

2021年11月10日掲出

教養学環 肥後梨恵子 講師

教養学環 肥後梨恵子 講師

東京工科大学では、革新的かつ実践的な教育活動の一環として、今年4月より各学部・学環における「戦略的教育プログラム」(第二期目)が始まっています。今回は教養学環での取り組みについて、肥後先生にお聞きしました。

■教養学環で取り組んでいる「戦略的教育プログラム」についてお聞かせください。
 教養学環では2つの「戦略的教育プログラム」に取り組んでいて、そのひとつが今回お話しする「サービスラーニングによる実学教育促進プログラムの開発」です。サービスラーニングとは、社会貢献活動を通した学びのことで、社会で通用する人間力を養うことを目的としています。実学教育を掲げる本学でも、専門性の習得に加え、実社会における社会的ニーズ・課題に関する活動や社会貢献活動に学生が参加することで、そのテーマについて理解を深め、自己成長を促し、人間力を向上させるサービスラーニング教育を実践してきました。その内容をさらに拡充させ、プログラムへの積極的な参加を促進するための施策を、「戦略的教育プログラム」として4年間かけて進めていきます。
 具体的には、大きく3つの柱を設けて、それぞれ取り組んでいきます。ひとつめが、「幅広い学生の受講を促進する教育環境の拡充」です。実はこれまで、実習科目である「サービスラーニング」は、限られた学生のみが受講していました。その理由のひとつは、主要な実習先が東京都外や遠方で、交通費などの費用がかかるからでした。そんな中、ローカルに根差していきたいという本学の方針により、2020年度にサービスラーニングのプログラムをリニューアルし、社会体験学習の場を八王子キャンパスのある八王子市内に据えることになりました。もちろん、本学には八王子在住の学生だけでなく、神奈川県や千葉県、埼玉県などから通学している学生もいますから、八王子市内への体験学習に通うにしても交通費がかかります。そこでまずはそういう金銭的負担のサポートとして1学生につき3000円程度を提供し、受講を促進しようと考えています。これはサービスラーニングの体験学習に参加した学生全員に提供します。
 2つめの柱としては、「専門性を活かせる教育体制の開発」に取り組んでいきます。サービスラーニング自体はアメリカ発祥で、国を挙げて人間の市民性を教育し直そうと始まったものです。ですからアメリカでは、この分野がかなり発展していて、現在は専門性を有する教育とコラボレーションし、その活動の中で市民性を磨いていくことが進められています。例えば、環境系学部で学ぶ大学生が、地域のごみ処理の仕方について議論を進めて、より良い方法でごみの回収を始めるというように、学生たちが大学で学んでいることを地域課題に落とし込んで解決するというものがあります。もちろん扱われる分野は、エネルギーや環境分野だけでなく、子供の貧困問題など多岐にわたっています。本学もその姿勢をお手本に、理工系という専門性や大学で学んでいる専門分野を地域の課題に絡めながら、実社会で体験できるプログラムを開発していく考えです。
 また、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が落ち着くことが前提ではありますが、発展的なサービスラーニングを数多く実施していることで有名な、アメリカはポートランド州立大学への視察も計画しています。さらに、海外でサービスラーニングの体験をしてみたいという学生を、本プログラムの最終年度にポートランド州立大学へ行かせ、本場の学びを体験させる計画もあります。そのための橋渡しを含めた事前調査として、教員による視察を来年度考えています。
 3つめの柱は、「サービスラーニング教育と地域連携に関する広報活動の実施」です。サービスラーニングの体験学習で学生が八王子市内に出て行き、地域住民や行政、民間企業の人たちと関わる中で、学生なりに抱いた考えや思い、地域からの声などの情報を学生視点でまとめて、大学から発信していこうと考えています。まだ具体化していませんが、アルバイトのような形で、「サービスラーニング」の体験学習に参加した学生に対してインタビューをしてくれる学生を募ろうと考えています。学生がサービスラーニングの活動で体験したことや学んだことなどを、学生目線で情報収集してもらうのです。また、体験学習の受け入れ先である地域に行き、地域からの声も学生の目線で集めてきてもらいます。そうして集めた情報を整理して、ブログなどで発信していきたいと考えています。もちろん、その内容や構成も学生に考えてもらう予定です。
 この広報活動の狙いとしては、学生が学生に向けて、本学のサービスラーニングでできる体験や地域での活動について発信してもらうことで、それに興味を持った学生が集まってくるというサイクルをつくることです。また、学生が「地域からこういうことを学ぶ機会を与えていただきました」という感謝の意を地域へ発信していきたいという思いもあります。大学としての役割を地域に還元しつつ、関わってくださった地域との良好な関係性を築くことを期待しています。

■現在、どんな体験学習が進んでいるのですか?

 実は、新型コロナウイルス感染症の影響で、今年度は前期の「サービスラーニングⅠ」が休講、後期の「サービスラーニングⅡ」も八王子市内での学生の受け入れが難しいということで、授業は開講するものの体験学習は休止になっています。ですから後期は、講義形式やグループワークで、コミュニケーション力を育むようなことに取り組んでいます。学生は友達同士とのコミュニケーションは得意ですが、それ以外の人とは、なかなか接する機会がありません。しかし、地域に出ていったときには、社会人や年齢の違う人とコミュニケーションを取る必要があります。大学生にとってそれは少しハードルがあるようですし、対応に困っている学生も見受けられます。そこでコミュニケーションの仕組みについて、グループワークを通して学んでもらっています。
 それに加えて、社会を支える仕組みを学んでもらう予定です。ワーカーズコープ(労働者協同組合)といって、一般の民間企業で働く働き方とは異なり、地域の課題を解決するなど地域貢献を職業として成立させる社会貢献事業が、今、注目を集めています。そういう働き方が地域の課題をどう解決できるか、あるいはボランティアを通じてどういうことを学べるのか、それが自分にとって何を意味するのかということを考えるきっかけにしてもらうために、都市部の環境保全に取り組んでいる方を授業のゲストスピーカーに招こうと計画しているところです。このように「サービスラーニングⅠ・Ⅱ」では、グループワークやワークショップのような形で学生間や学生と教員間、地域の方との対話を通じて、自分自身を振り返ってもらうことに重きを置いて進めています。  

■今年度はコロナ禍で実施が中止されましたが、八王子市内での体験学習にはどのようなものがありますか?
 「サービスラーニングⅠ・Ⅱ」に関しては、八王子市の学園都市文化課が八王子市内におけるボランティア活動や社会貢献活動のリストをつくってくださる予定で、そこから選んで体験学習に行くことになっています。まだリストは出ていませんが、内容は多岐にわたり、例えば小学校での子供たちに関わる活動や自治会のお手伝いなど、地域コミュニティで必要とされている活動に学生が参加することを考えています。
 また、本学の教員が開拓した部分では、農業を通じて福祉に貢献する“農福連携”事業に学生が参加させてもらい、地域とつながることの重要性を学ぶという体験学習があります。それから、八王子市には都市部の環境保全を強く推進している団体があるので、そこと何か一緒にできることはないかと考えています。ちなみに、農福連携と環境保全の体験学習に関しては、今回の「戦略的教育プログラム」採択以前になりますが、今年2月に2週間の集中型という形で実施することができました。コロナ禍により参加する学生数を制限することにはなりましたが、17名の学生が八王子市内で2グループに分かれて体験学習を経験しました。
 ひとつめのグループは、農福連携を実践している「アーバンファーム八王子」において、“地域とのつながり”をテーマに学習しました。福祉の概念を取り入れた農業は、野菜を生産・販売するだけでなく、地域と積極的に関わることで、地域の課題を解決する役割を担います。ここでの体験は、学生に人とのつながりの重要性を肌で感じさせる貴重な学習になったようです。
 もうひとつのグループは、八王子市内で都市農業に取り組む「アンドファームユギ」と共に、都市部の里山保全をテーマにした体験学習に取り組みました。八王子市堀之内地域に残る東京都が指定する里山保全地域の水田で、田んぼの溝掘り(水路掘り)作業を中心に行いました。昔ながらの水田での溝掘りは力のいる地道な作業で、学生は仲間と支え合うことの大切さを感じたようです。

 また、「サービスラーニングⅢ・Ⅳ」では、もっと深く地域の課題に関わる活動に参加します。これは2年生以上が履修できる「地域共生論」の単位を取った学生のみが受けることのできる科目です。「サービスラーニングⅠ・Ⅱ」はいわばエントリーレベルです。「地域共生論」で社会課題についての知識を得た上で受講する、その次のレベルにあたる「サービスラーニングⅢ・Ⅳ」では、より本格的な実習内容を想定しています。将来的には、地域の課題などを自治会に入り込んで見つけ、学生の専門性を活かして解決の糸口を見つけるような、自分の学んだことを実社会にどう活かすかを考えられる授業にしていきたいと考えています。また、この「サービスラーニングⅢ・Ⅳ」を履修した学生を対象に、ポートランド州立大学への海外研修希望者を募り、選考できればと考えています。

水田の溝掘り作業のようす

■今後の展望をお聞かせください。
 新型コロナウイルス感染症の影響次第ではありますが、コロナ禍が収まれば、学外活動を再開します。まず学生が学外へ体験学習に行かないことには、何も始まりませんからね。学生が学外活動に行けたら、その場所を改めて取材したり、学んだことを地域の人に伝えたり、あるいは学生が学生に取材するなどして、情報発信をしていきたいです。今はブログでの発信を考えていますが、実際に学生が活動に行った後、その声をどういう形で発信するのが良いかも含めて考えてもらえればと思っています。それもサービスラーニング教育のひとつとして、発信力について考える機会になりますからね。例えば「サービスラーニングⅢ・Ⅳ」で、学生がどのようなホームページで、どういう情報発信をすると良いかといったことを考えるとき、もしかするとメディア学部の学生が自身の専門性を活かして、取り組めるかもしれません。そういう意味ではサービスラーニング教育は、教員が形を作りさえすれば、どんなことも学びになり得る教育手法だと言えます。

■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。
 今、大学は専門性だけでなく、人間力をしっかり身に付けられる場であることが強く社会から求められています。人間力を備えるということは、つまり幅広く考えられる人間になるということです。俯瞰してみると、今の時代は世界で「共生」が求められていますよね。地球の環境破壊や持続可能性が危惧される中、良い解決策が見つからない、あるいは良い形にならないのは、やはり人間が自己中心的な考えでいるからかもしれません。だからこそ、もう少し幅広く考えられる人間が求められているのです。
 人間の視野を広げるのに欠かせないものが教養教育であり、その重要なひとつがサービスラーニング教育です。東京工科大学は、専門性に加えて、幅広く考えられる人間を育成するための教養教育が整っています。その強みをぜひ、入学して実感してください。

■教養学環WEB:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/la/