大学の学びはこんなに面白い

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生化学はよくわからなかった生命現象を分子や原子レベルで化学的に捉え、そのメカニズムを探索できるから面白い!

2021年1月8日掲出

応用生物学部 生命科学・医薬品専攻 生命科学コース 横山憲二 教授

医療保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻(2021年4月新設)澤田辰徳 准教授

応用生物学部の学部長を務める横山先生。今回は応用生物学部の学びやコロナ禍での授業体制、ご自身のご研究についてお話しいただきました。

■応用生物学部では、どのようなことが学べるのでしょうか?

 応用生物学部はその名の通り、生物の優れた機能を応用して、人や社会に役立つものをつくるための技術や知識を修得することが大きな目的の学部になります。もう少し具体的に言うと、医療や環境、食品、化粧品を含め、幅広い分野を対象としたバイオテクノロジーを学べるというのが本学部の特徴です。
 また、2020年度より「生命科学・医薬品専攻」と「食品・化粧品専攻」の2専攻制を導入しました。専攻別に入学し、3年次になると「生命科学・医薬品専攻」の学生は、生命科学コースと医薬品コースのいずれかを、「食品・化粧品専攻」の学生は、食品コースと化粧品コースのいずれかを選択して、3年後期からはそれぞれの研究室に所属することになります。
 この2専攻制を導入した理由のひとつは、1年生の早い段階から専門性の高いものに触れる機会を持ってもらうためです。そうでない場合、実際に自分の学びたい専門分野が随分と先にあるように感じかねません。ですから早い段階で専門性に触れることで自分の興味ある分野の刺激を受け、やはりこれが面白いなと実感しながら進級していく形になっているのです。

 それから各コースでは、色々な研究が進められています。例えば医薬品コースでは、最先端のがん治療医薬品の研究があります。DNA、RNAを使った核酸医薬の開発で、がん細胞のある遺伝子に特異的に作用するRNAやDNAを薬として使えないかという新しい研究に取り組んでいるのです。こうした研究は、これまでの一般的な医薬品であった低分子医薬品とは異なり、世の中の主流になりつつあるもののさらに先へ行こうという研究です。
他方、食品コースでは、例えば機能性食品の研究があります。農産物の中から肥満を抑制する効果のある物質を見つけて、その効果を実験で証明し、肥満を予防するという研究が進められているのです。そのほか、食品の冷凍に関する研究もあります。一度凍らせて解凍した食品は、食感や味が落ちる場合が多いですが、そういうものの解凍メカニズムを研究して、より良い冷凍・解凍方法を見つける研究が行われています。

■では、先生のご研究についてお聞かせください。

 私の研究室では、生化学分析とヘルスケア工学に関する研究をしています。例えば、新しい血糖値センサーの開発に取り組んだ経験から派生して、現在は本学・医療保健学部臨床工学科の荻野稔先生と一緒に、血液成分をモニターしながら血液透析を行う研究を進めています。血液透析は何時間もかかるものですが、その時間を短縮することについては、あまり考えられてきませんでした。そこで血液に一番多く含まれているタンパク質“アルブミン”を定量することで、透析が十分に行われているかどうかを見えるようにしようと取り組んでいます。それがうまくいけば、もう少し透析の時間を短縮でき、患者さんの負担を軽減できるかもしれません。
 また、アルブミンには、還元型アルブミンと酸化型アルブミンがあり、酸化型の方が多いと、酸化ストレスにさらされているということがわかります。実際、がんを患っている人や糖尿病の人などは、そういう酸化ストレスにさらされているのですが、それを示す酸化型アルブミンの量を血液透析中に簡便にモニタリングできるようなシステムを開発できないかと取り組んでいるところです。

 それから、食品関連の研究も手掛けています。もともと私自身はヘルスケア系の医療分析や臨床検査の分析を中心に研究してきましたが、そういう技術は食品など、色々な分野の分析にも使えるのです。例えば、今、学生が取り組んでいる研究に、カプサイシンという唐辛子成分を簡便に測るセンサーの研究開発があります。学生自身が研究してみたいということで、最初は面白半分で始まったところもありますが、カプサイシンは生理的に血行を良くする効果もあるので、多少ヘルスケアにも関わるということで研究することにしました。実際に、一味唐辛子やタバスコを測ってみたり、蒙古タンメン中本のカップ麺で辛いソースを加えたものを測ったりしました。ただ、カプサイシンは油に溶けやすく、水に溶けにくいという性質があります。そのため、粉の場合は有機溶媒という油のようなもので抽出して簡単に測れるのですが、ラーメンのスープのようにカプサイシンが水に溶けたように見えて、実は溶けていない懸濁(けんだく)状態のものは、測定が意外と難しいのです。ですから今後は、懸濁状態のものをどう測るかといった研究を進めていきたいと考えています。理想としては、ラーメンスープにセンサーを入れたらそのまま測れるというのが究極ですが、それをいかに実現するかは、まだまだ工夫が必要です。
 ちなみに、簡便な測定方法だけではなく、液体クロマトグラフィーという正式な方法でも測定しています。それによって学生は、本来の測定手法を習得することができるようになります。

■先生が生化学分析に興味を持ったきっかけとは? またこの研究の面白さとは何ですか?

 もともとは化学が好きで、大学でも化学系の学科に入りました。ただ、化学だけの領域では、色々なことがすでに研究し尽くされていて、新しい何かが生まれるということが減りつつある時期でもありました。そういう時期に、バイオテクノロジーが急激に発展し、化学の立場で生物を理解し、応用するという流れができて、化学分野の人が生物分野に入りやすくなったのです。昔は生物の個体だけを見ているしかなく、よくわからないところが多かったものが、生物や生命の活動を酵素、タンパク質、遺伝子といった分子レベルで捉えることができるようになって、だんだん生物と化学の境界がなくなり、化学側が新しいものを求めて、生物を化学的に理解するという学問に入っていけるようになってきたのです。私自身も動物の観察には、サイエンスとしてあまり興味を持てませんが、分子レベルでどう反応しているかということには興味があるので、チャレンジできることが多そうだと思い、この分野の研究をするようになりました。
 この研究の面白さとしては、今まではブラックボックスでよくわかっていなかった生物や生命現象を、分子や原子レベルで化学的に捉え、そのメカニズムを探索しながら理解していけるところだと思います。しかも、まだわからないことが多いですから、研究のしがいもあるわけです。

■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 受験勉強は大変だと思いますが、やみくもに勉強するよりは、目標を持って取り組んだ方が頑張れるのではないかと思います。大学に入ってこんな研究をしたい、こんなことを実現したいという目標、もっと大きく言えば夢ですね。そういうものを持っていれば、それを叶えるために必要な勉強をしているのだと思える分、モチベーションが上がるのではないでしょうか。
 大学は入学したら終わりではなく、その後、どうするかがないと意味がありません。入学してから何をするのかイメージしながら、受験という通過点のその先に向けて、必要なことを勉強してください。受験科目は基礎ですから、大学入学後や社会に出てからも役立つ知識です。受験のためだけのものではありませんから、決して無駄にはなりませんよ。