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海外プログラムは、外国のことを知るだけでなく、外から日本を見て色々な発見ができる絶好の機会です

2022年10月28日掲出

教養学環 楠元洋子 准教授

教養学環 楠元洋子 准教授

新型コロナウイルス感染症の影響で、2年半の間、中止となっていた海外プログラムの海外派遣が、この秋から再開しました。9月に実施されたシンガポールでの「海外研修」や今後の予定などについて、教養学環の楠元先生に伺いました。

■コロナ禍で中止となっていた海外プログラムの海外研修が9月に再開されました。その内容についてお聞かせください。

 9月4日から11日まで、シンガポールでの「海外研修」が実施されました。本学の教養学環の海外プログラムには、主にコロナ禍中に始まった「オンラインマンツーマン英語研修」、従来から実施されている異文化体験で視野を広げる「海外研修」、イギリスの語学学校で英語を学ぶ「海外語学研修」、マレーシアでインターンシップをしながら英語を学ぶ「海外インターンシップ研修」などがあります。今回のシンガポール派遣は異文化を体験する「海外研修」ですから、海外に興味のある学生は、誰でも参加できるというものです。
 今回は全学部から学生が参加し、総勢21名となりました。内訳としては、応用生物学部とコンピュータサイエンス学部が各6名ずつ、工学部が3名、メディア学部1名、デザイン学部2名、医療保健学部2名、大学院のアントレプレナー専攻から1名でした。これまでは1年生の参加が多かったと聞いていましたが、今回は1年生が4名、2、3年生がそれぞれ8名、大学院生が1名となっています。今の3年生はコロナ禍で入学して、サークル活動もできず、学部間のつながりや先輩後輩のつながりも薄い、学園祭も経験できていない…という学年なので、大学での思い出作りや友達作りを参加の理由として挙げている人もいました。そういう背景から今回は、3年生の参加が多かったのかもしれません。

 シンガポールでの具体的な研修内容は、基本、午前中に語学学校で授業を受け、午後の訪問先のことや文化、歴史などを学んだり、現地の先生のおすすめを聞いたりし、午後から実際にその場所へ行って体験するという形でした。例えば、初日はシンガポールに興味を持ってもらうという目的で、午前中にシンガポールという国のことを学び、午後からマーライオン公園やマリーナベイサンズホテルなど、シンガポールを象徴するような観光地を訪れました。他の日には午前中にイスラム文化を学んで、午後からアラブストリートへ行ったり、午前中にシンガポールにおけるインド系文化などを学び、午後からインド系シンガポール人の方たちが住むリトルインディアを訪れたりしたようです。その他、午前中の授業では、シンガポールと日本の気候や歴史、教育などの比較を行ったと聞いています。
 また、現地出発日の前日には、シンガポールの名門国立大学である南洋工科大学の日本愛好会の学生たちと交流会を開催しました。交流会は2時間ほどでしたが、それでは時間が足りないと、終わった後、そのまま一緒に晩御飯を食べに行ったり、ショッピングに行ったり、おすすめのお店を紹介してもらったり、街を案内してもらった学生もいたようです。さらに帰国後もオンライン通話などで、交流を続けているグループがありますよ。

マーライオン公園

【マーライオン公園】

南洋工科大学日本愛好会の学生たちとの交流会

【南洋工科大学日本愛好会の学生たちとの交流会】

■海外研修に参加した学生の感想として、先生の印象に残っているものはありますか?

 研修へ出発する前、7月と8月に1回ずつ、事前授業を行いました。7月には各グループがトピックを決めてリサーチをし、グループでポスタープレゼンテーションをしたのですが、そのときにシンガポールは多文化・多民族国家だということを学生たちは知識として得ています。さらに現地でも午前中に、語学学校で現地の文化について学び、知識としては理解していました。けれども実際に街へ出てみると、地域によってリトルインディアがあり、アラブストリートやチャイナタウンがあり、その街の雰囲気や人との対話の仕方、そこにあるニオイがそれぞれ違うと気づいたという学生の声がありました。頭で多文化・多民族国家だと理解していたつもりだったけど、現地でそういう実感を伴う発見ができて、これが異文化を体験するということなのだと理解したというのです。その“気づき”が感想として出てきたということが、私にはとても印象深かったですね。
 事前授業でもよく「異文化体験とは単に現地に行くということではないので、何が異文化なのかを自分で発見してください」と話していました。日本と何が違うのか、逆に類似点はないかということを意識しましょう、と。それで学生たちは、色々なことにアンテナを張って、様々な違いや類似点を発見していました。
 というのも研修中の課題として、毎日、ジャーナルという日記のようなものを書いて提出してもらっていたのです。そこには、単に楽しかったという感想ではなく、どんなことを感じ、発見したか、何に気づいたかといったことを書くことにしていました。学生のジャーナルには、例えば、初日にマリーナベイサンズホテルへ行ったとき、展望台から湾を見下ろすと、たくさんの貨物船が停泊している光景を見て、本当にシンガポールが貿易の拠点、ハブになっているのだということを理解できたと書かれていました。その他、外食するとき、店員さんがスマートフォンを触っていて、お客さんにあいさつもしないという体験をした学生もいます。自分は飲食店やコンビニでアルバイトをしているけど、仕事中にスマホは触らないし、お客さんが来たらすぐに「いらっしゃいませ」と言うので、ずいぶんと接客の姿勢やお客さんの捉え方が日本と違っているという発見をジャーナルに書いてくれました。日本の当たり前が当たり前ではないと実感したようです。

事前授業のポスター発表

【事前授業のポスター発表】

シンガポールの多文化・多言語を表す駅の表示

【シンガポールの多文化・多言語を表す駅の表示】

 また、事前授業では、海外研修の参加目的と目標を明確にするという課題を出しました。今回のシンガポールでの研修は語学研修ではないので、語学力向上が目的ではなく、異文化体験をすることが目的のプログラムではありますが、自分の中でも目的を定めて、それを達成するための小さな目標を立てましょうと課題を出したんです。学生から出てきた目的と目標に対してはこちらで確認し、「ざっくりし過ぎていて、目標になっていないのでもっと具体的に」といった形でフィードバックをしました。そうしたやりとりを経て、最終的に出てきた目標が、例えば、英語力向上をひとつの参加目的にしている学生の場合、旅行英会話で道の尋ね方のフレーズを事前に学んでおいて、現地で道に迷っていなくても、あえて道を尋ねるなど、覚えた英会話のフレーズを実際に使ってみるというものでした。その他、Google翻訳は使わないと決めたり、一緒に行く仲間に英語の得意な人がいても頼らずに、まずは自力で頑張るといった目標を立てたりしている学生もいました。

■今のお話しにも通じますが、海外プログラムに参加する意義や学生にとってのメリットとはどんなものでしょうか?

 海外プログラムに参加する最大のメリットは、外国に出て、外から日本を見ることで、日本の良いところや問題点に気づけることだと思います。訪問先の国の文化や歴史、背景などを知り、学びがあることはもちろんですが、日本についても海外に出たからこそ気づけることがあります。また現地での体験や人々との交流を通じて、日本についてもっと知りたい、もっと日本について英語で説明できるようになりたいと思うことも多々あると思います。
 今回、南洋工科大学の日本愛好会の学生たちと交流しましたが、彼らは元々、日本に興味を持っていて、日本について色々と質問してくれたと思います。一方、本学の学生は、英語力とは関係なく、自分が説明できるだけの日本文化の知識を持っていなかったりします。ですからもっと日本のことを、歴史を含めて学ばないといけないと、意識が高まっている学生がたくさんいました。
 あとは、考える力がつくのではないでしょうか。事前授業の指導方法にもよりますが、海外では小さなことへの気づきがたくさんあります。トイレが有料だとか、地下鉄のドアの開いている時間が日本の3倍くらいあるとか。意識して何かに気づこうと毎日を過ごすことで、色々なところに目を向けて比較したり、気づいたり、考えたりする力がつくと思います。さらに、そこから「なぜ、こうなんだろう?」という背景を調べてみようということにも繋がっていきました。そういうチャンスがたくさんあると思います。

■今後は、どのような海外プログラムが予定されていますか?

 現時点で、2月・3月に実施予定のプログラムが3つあります。ひとつは韓国とロサンゼルスの海外研修(異文化体験プログラム)。そして、もうひとつがイギリス語学研修です。これは約2週間、現地の語学学校に行って、しっかりと英語を勉強するプログラムです。
 韓国派遣はこのプログラムで初めての実施になります。ここ数年、学内の韓国語のクラスは、定員オーバーになるほど人気です。そこで、コロナ禍により海外プログラムの現地派遣が実施できないときに、オンラインで韓国語を学べるようにしようと、今年3月に「オンライン韓国語学研修」を実施したのです。韓国語に興味のある学生と、K-POPや映画・ドラマなどの韓国文化に興味のある学生が参加していました。実は私もこの研修を受講してみたのですが、初級の入門編だったので全くの入門者でも、ある程度、ハングルが読めるようにはなりました。そこで今度は実際に現地に行って、学んだフレーズや読めるようになった文字を読んでみましょうと、来春、実際に行くプログラムが企画されたのです。
 また、今後の展開としては、新たなプログラムの開発を進めています。今年4月に1年生に向けて「TOEIC Bridge」という英語のテストを実施したのですが、その際、英語圏・非英語圏で行ってみたい留学先に関するアンケートを取りました。その結果、非英語圏としては台湾が行き先として一番人気だったので、まずは異文化体験の研修先として開発できないかと考えています。また、英語圏では、新たにオーストラリアを語学留学プログラムの派遣先にしようと開発中です。他方、コロナ禍中に始まった「オンラインマンツーマン英語研修」は定評があるので、今後も継続していきます。
 それから本学では、申し込み時に成績評価値であるGPAが2.5以上の学生は、助成金を申請できるサポートを行っています。プログラムや参加費用に応じて、助成金の金額は変わりますが、学生にはそれもうまく活用してもらいたいですね。

■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 一歩踏み出す勇気を持って、何事もとりあえず試してみるという姿勢でいてほしいですね。今回、シンガポールでの海外研修を経験した学生の例でもお話ししたように、事前に学んだ知識はあっても実際に行ってみると、街の雰囲気、色使い、ニオイ、味など、五感で見て、聞いて、嗅いで得た体感や情報は、インターネットなどで収集した情報などには到底、及びません。ですから、とりあえず行ってみる、試してみる、ということが大事なのだと思います。
 翻って受験生のみなさんは、どの大学に進もうかと迷ったり、どの学部でどんな勉強ができるかよくわからなくて困ったりすることがあると思います。そこでネット検索をしたり大学の口コミを調べたりするとは思いますが、それだけの情報で決めるのではなく、実際にオープンキャンパスに足を運んで、自分で体験してみてください。実際に行ってみると、興味のある学部とは違うところに興味がわくかもしれませんし、新しい発見につながる可能性もあります。それによって、一層、将来の目標や目的がクリアになるのではないかと思います。ぜひ、自分から色々な体験をしに飛び込んでいきましょう!