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単位がもらえるスキーの学外実習!?

2023年9月15日掲出

教養学環 佐久間 裕司 教授

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2023年2月13日~17日、群馬県の万座温泉スキー場にて、3年ぶりにウェルネス科目の集中実技(スキー)が開催されました。今回は、その詳細とウェルネス科目や集中実技の狙いなどを教養学環の佐久間先生にお聞きしました。

■コロナ禍で中止が続いていた集中実技(スキー)が、今年2月、3年ぶりに開催されました。まずはこの集中実技の概要を教えてください。

 集中実技(スキー)は、ウェルネス科目の学外実習で、冬季休業期間に実施されるものです。今回も従来通り、場所は群馬県吾妻郡嬬恋村の万座温泉スキー場で、2月13日から5日間の開催でした。全学部の学生が対象で、今回は64名が参加しました。八王子キャンパスの学生が中心で、蒲田キャンパスの学生はデザイン学部から1名、医療保健学部から5名と、参加人数は少ないです。3年生以上になると、就職活動や卒業研究などが始まりますから、基本的に参加する学年は毎年、1、2年生が中心になっています。

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 また、この集中実技(スキー)はウェルネス科目という授業ですから、成績がつきます。評価の内訳としては、まず出発前にある事前授業に出席することが参加条件です。事前授業は4コマあり、1つは映像を見て練習過程を理解します。それから冬山の気象や安全について学びます。例えば気温が一度下がるとどうなるかといったことなど、万一に備えて知っておいた方がよいことを学んでから、現地へ向かうのです。
 現地では実技試験等を担当の先生方にお願いしていて、各グループの能力に応じて試験種目を決めてもらい、成長具合を評価します。これは上手下手ではなく、当初のレベルからどれだけ上手になったかという到達度で採点しています。また、現地ではミーティングもあるので、そちらに積極的に参加しているかどうかも評価対象です。そして実習終了後、感想文を提出してもらいます。それらを総合して、100点満点で採点しています。

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■実習当日は、どのようなことに取り組むのでしょうか。

 初心者も経験者もいるので、現地ではまず能力別にグループ分けを行います。申し込み段階で、自分のスキー能力がどの程度かを自己申告してもらっているので、実習初日は、その自己申告ベースで分けたグループで一旦、スキーを滑ってもらいます。初心者はもちろん滑れませんので、スキーの着け方や雪上の歩き方といったレッスンに入ります。ある程度滑れる人は、どのくらい滑れるのかを実際に見せていただき、近しい能力の学生をグループにまとめていきます。
 現地で指導にあたるスタッフは、他大学の先生や本学の非常勤の先生です。技術指導だけでなく、5日間の中できちんと教育する必要があるため、大学の先生方に班ごとの指導をしていただいています。

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■参加した学生の感想では、どんな声が聞かれましたか?

 例えば、技術面でとても上達したという声が多く寄せられています。足を平行に揃えて滑る"パラレルターン"ができるようになったとか、初心者で初日は大変だったけれど、日々、自分の成長を感じられて楽しかったというように、多くの学生が技術的に上達したと感じたようです。

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 また、現地では規則正しい生活ができますから、日頃の不規則な生活に対する反省の声や、運動すると食事が美味しいといった声もありました。毎晩、温泉に入れたので、疲れが取れたという感想もありましたね。
 それから人間関係で言うと、色々な学部・学科・学年の学生が参加しているので、そういう枠組みを超えた友人がたくさんできたという声もありました。特に蒲田キャンパスの学生と八王子キャンパスの学生は普段、話す機会がありませんから、それができたことは教員としても嬉しいです。同じ班のメンバーと親しくなって、連絡先を交換できたとか、人見知りするタイプだったけれど、人と接することに少し自信が持てたという声も聞かれました。
 その他、このような実習の選択肢をもっと増やしてほしいという要望も出ています。スキーやキャンプだけでなく、色々なスポーツで集中実技を開催してほしいということです。

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■先生が学生を指導する際に心がけていることとは?

 私が伝えたいことを、学生がきちんと理解できているのかどうかを確認しながら、指導するようにしています。例えば、学生にある方法でアドバイスしてうまくいったとしても、別の学生には全く通用しないということがあります。ですから、個々人に合わせて、違う角度から臨機応変にアドバイスや指導をしていくというのが私のスタンスです。
 スキーの場合も、1グループ8~12人ほどと少人数です。また、初級グループにはできるだけ手をかけたいので、少人数かつきめ細やかな指導を先生方にお願いしています。初心者は、言われていることもすぐにはわからないでしょうし、動作としてのイメージも簡単には作れませんから、より丁寧に教える必要があります。

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■教養学環のウェルネス科目についてお聞きします。大学におけるこの科目の目的や狙いは何でしょうか?

 本学のウェルネス科目は、講義科目とスポーツ実技があり、大きく言えば、どちらも自分の体や健康を管理できるようになることを目的としています。講義科目には、「栄養と健康」、「心と健康」という2つの科目があります。スポーツ実技は、大学内の施設を使って一般スポーツやコミュニティスポーツをするという内容の授業です。1年次は、受験勉強ばかりしてきて体力が落ちている学生に対して、比較的運動量が多く、これまでに経験したことのあるようなバスケットボールやバレーボールといった一般スポーツを行います。2年次以上になると、それがニュースポーツ系になります。例えば、ソフトラクロス、ユニホック、ドッジビー、アルティメットといった、いわゆるレクリエーション系のスポーツです。あるいはゴルフが種目に入っているものもあります。どちらかというと運動が苦手な人でも勝つチャンスの出てくるスポーツや、人と協力する種目を採用し、社会に出た時に人々と楽しく過ごせるようにと考えています。こうした誰もが手軽に楽しめるようなスポーツをコミュニティスポーツと呼んでいます。

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 集中実技については、大自然と対峙する中で行うスポーツを通して、その壮大さや美しさ、厳しさを肌で体感し、その中で自然にうまく適応するためのあらゆる術を体験することが目的です。これは普段の大学にいるときではできないことですから、夏季休業期間や冬季休業期間を利用して、5日間ほど開催しています。
 学内の授業では、技術的なことなどは教育できますが、命の大切さや普段の平穏な暮らしがいかにありがたいかということは、自然を相手にする現地でしか教えられません。学生にそういうことを考えてもらうきっかけづくりができるので、集中実技はとても大切だと思っています。ですから、スポーツの楽しさだけでなく、実際に自然の中に身を投じることで経験できることがたくさんあると、学生に知ってもらう機会にしたいですね。

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■今後の展望をお聞かせください。

 今回のスキー実習は、まだコロナ禍の最中でしたが、万全の体制を整えたことで実施できました。発熱者が出れば、即隔離し、タクシーで下山させて受診させるなど、しっかりと準備をしていたのです。ですから今後も社会の情勢を見つつ、そうした感染症対策を整えて、集中実技を実施していきたいと思っています。やはり教育を止めてしまうことの方が、学生にとってのデメリットが大きいと思いますから。
 また、スキーの場合、これまでは万座温泉スキー場で開催してきましたが、ゲレンデが縮小傾向にあり、こちらで思い描く実習ができなくなりつつあるため、2023年度からは長野県の志賀高原スキー場に実習先を変更します。志賀高原は初めての実習地で、今までと勝手が違うところもあるかもしれませんが、こちらの教育計画に沿う形で使いやすく、最適です。学生にとっては、色々な練習ができるスキー場がたくさんあるので、今まで以上に実習を楽しめるのではないかと思います。

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■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 今、みなさんに考えていただきたいことは、世の中が便利になるのに伴い、人間がどんどん退化しているということです。なぜこうなったのかという歴史をたどると、やはり現代社会は交通網や通信技術の発達により、結果として、人が目的地へ移動しなくても要件を果たせるようになってしまったことが挙げられます。そういう"文明の力"の落とし穴にはまってしまい、今や運動不足やそれによる体力低下、あるいは肥満や栄養過多、生活習慣病といったことが起こり、健康に対する警鐘が鳴らされているのです。
 最近では、スマホの普及により、ずっと下を向いた姿勢でいるために頸椎に不具合をきたして体調不良になる"スマホ首"や、"ながらスマホ"によって事故が多発するという状況になってきています。果たしてこのままで良いのかどうか。みなさんには、そういったところに目を向けてもらい、健康を選択する方向に傾いていってほしいというのが、私からのお願いであり期待です。
 本学のウェルネス科目は、先ほども言いましたが、スポーツ実技では一般スポーツやコミュニティスポーツ。それからスキー、キャンプなどの集中実技を通して、運動習慣や健康体力の維持増進、人間関係の形成や社会形成能力はもちろん、自己管理能力の向上や問題への対応能力・解決能力といった基礎汎用能力を身に付けることに貢献する教育プログラムが入っています。高校までの体育や部活とはまた違いますから、ぜひ、長い目で将来にどういう人であるべきかを考えながら、受講してほしいですね。そして健康で楽しく、有意義な人生を送っていただければと思います。