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話す・聞く・食べるを支援するスペシャリスト“言語聴覚士”の世界に飛び込んでみませんか?

2020年6月26日掲出

医療保健学部 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻(2021年4月新設[申請中])就任予定者 石津 希代子 准教授

石津 希代子 准教授

  聴覚分野の中でも特に利き耳について研究している石津先生。「白衣を着てみたい!」という素朴な動機から言語聴覚士という未知の世界へ飛び込み、学ぶうちに、そして臨床経験を重ねるうちに、その面白さを知ったそうです。今回は来春、医療保健学部で新設予定のリハビリテーション学科言語聴覚専攻に関する話を中心にお聞きしました。

■まずは言語聴覚士の仕事について教えてください。

  簡単に言うと、「話す」「聞く」「食べる」ことの支援を行う医療専門職です。例えば、脳血管障害が原因で体にマヒが残った場合、その患者さんの運動機能の改善に理学療法士が、日常の生活動作の改善には作業療法士が、さまざまなリハビリテーションを通して関わります。ですが体のマヒは何も足や手だけに出るわけではなく、口や顔にも生じることがあります。唇や舌、口の周囲筋肉は非常に細やかな動きをしていて、私たちはそれによって色々な音を出すことができたり、うまく食べ物を飲み込めたりします。ところが口や顔などにマヒが生じると、話すことが難しくなったり片側の口元から食べ物がこぼれたり、飲み込めなかったりすることが起きます。また、病気や先天的な原因によって聞こえの問題があると、周りの人とのコミュニケーションが難しくなります。そういう患者さんに対してコミュニケーション機能の回復を支援したり、楽しく食事をしたりすることができるようにリハビリテーションを行うのが言語聴覚士です。 人と繋がるという点で言葉は重要です。うまく思いが伝えられない、話せないといった患者さんや、ことばの発達に困難を抱えるお子さんに、ことばや話すことや聞くことなどのリハビリテーションを行い、社会でその方々が生き生きと生活を送れるよう支援をします。
言語聴覚士が関わる方は、赤ちゃんから高齢者まで非常に幅広いです。その分、活躍の場も広く、病院や介護福祉施設、療育センターをはじめとした子どもの支援を行う施設、訪問医療と多岐にわたっています。また教育現場と連携し、学校の先生方と協力しながら勉強に困っている、発達に問題を抱えたお子さんの支援をすることもあります。

■今、なぜ言語聴覚士が必要とされているのですか?

  2020年時点で、国内の言語聴覚士の有資格者は約3万4千人います。これは理学療法士が約18万人、作業療法士が約10万人近くいることに比べると、かなり少ないです。また、理学療法士は年間で1万人弱、作業療法士は約5千人前後の国家試験合格者がいますが、言語聴覚士は年間約1600人程度です。需要があっても、供給が足りていないというのが実状です。
その理由のひとつは、言語聴覚士が後発の国家資格で、国内ではまだ20年程度の歴史しかないことがあると思われます。20年もあると思うかもしれませんが、理学療法士や作業療法士はそれ以上の歴史がありますからね。そういう意味では、まだまだ知名度が高くないということも言えるでしょう。また、今の社会情勢として高齢の方が増え、ことばの問題を抱える患者さんが増えたり、訪問医療で活躍する人が欲しいという要望が増えたりしています。それに対して言語聴覚士の数がまだ十分ではなく、患者さんや利用者のニーズに応えられるだけの人数を賄えていないというのが現状なのです。逆にこれから目指す人の立場で考えれば、就職先はかなり潤沢にあるとも言えます。

■来年4月から始まるリハビリテーション学科言語聴覚学専攻の学びには、どんな特徴がありますか?

  言語聴覚士の養成課程は、専門学校、短期大学、大学など色々なルートがあるのですが、どこも国家試験を受けるために受講しなければならない内容は決まっています。ただ、その中でどういう学びをし、何を深めていくかということは、各学校の特徴で違っています。特に大学で言語聴覚士を養成する場合は、どちらかというと高度で専門的な内容や学問を深めるところに特化していく傾向があります。
本学の学びの大きな特徴のひとつは臨床実習にあります。例えば、1年生の早い段階から学修のレベルに合わせた見学実習を行い、年次が進むにつれてステップアップしていくような内容の実習を行います。今、理学療法士や作業療法士の養成校では、実習の見直しがなされていて、大きな転換期を迎えています。実習の時間数や病院実習での課題など、これまでのさまざまな問題に対する改正が始まっているのです。その波は近い将来、言語聴覚士にも来るでしょうから、それを念頭に時間の組み方や実習先での勉強の進め方、学びの深め方など、従来の実習方法とは全く違った実習の仕組みをつくっているところです。今後は、学生を受け入れてくださる病院や指導者の方からも、臨床教育での課題について積極的にご意見をいただき、私たち大学側ができることを明確にし、言語聴覚士を目指す学生がより実習で成長できるシステムを構築していく予定です。

またもうひとつの特徴は授業です。私は、長年、反転授業を組み込んだアクティブラーニング型の授業を行ってきました。簡単に言うと、学生が授業前に私の作成した講義動画を見て、そこで基本的なことを学習し、その後、実際の授業では動画で学習した知識をもとに色々な切り口で考えていきます。例えば、動画で基本的な疾患について学んだら、授業ではそういう疾患がある患者さんの日常にはどんな課題があるかを話しあったり、この患者さんにはどのような関わり方がよいかと議論し新たな発見を促したりということをしてきました。東京工科大学は、ICT分野に強い大学で、動画やオンラインを使った学習システムもすでに整っていますから、それを十分に活用しながら授業の中で多角的にさまざまなディスカッションを展開し、言語聴覚療法を効果的に学べるようにしていきたいと思っています。
学生にはこのような授業や大学での人との関わりの中で、あるいは実習や社会との繋がりの中で、多様な価値観に触れ、考えに幅のある臨床家に育ってほしいと願っています。また、これからの言語聴覚士に必要とされるのは、患者さんへの介入がどれだけ効果のあるものだったかを検証し、それをもとに再考するといった、常に自己研鑽をし続けていくスキルです。私としては卒業研究などを通して、そうした力の基礎を学生に身に付けてもらいたいなと思っています。
 

■どういう人が言語聴覚士に向いていると思いますか?

  人の気持ちを考えられたり気遣うことができたり、人と話すことを楽しめる人であれば、どんな方でも向いていると思います。よく学生に「私はこの仕事に向いていますか?」と相談をうけることがありますが、私は「どんな人も向いていないことはない」と答えています。なぜなら、必ずその人だけが気づくことができ、実行できる患者さんへの支援があると思うからです。向き不向きというのは、結局、自分で決めることではないですから。患者さんがこの言語聴覚士と出会えてよかったと思ってくれたのであれば、それが向いているということだと思います。人と関わることが好きで、真摯に懸命に患者さんに向き合うことができる人であることが一番です。
 

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

  臨床では、患者さんにより良い支援を提供するには、もっと多くの言語聴覚士が必要だと考えられています。だからこそ、興味を持ってくれる方には、ぜひ飛び込んできてほしいです。この仕事は、患者さんと向き合うことで生涯、勉強でき、成長でき、追究できるものです。その面白さを本学でしっかり伝えたいと思っています。 また、人が少ないならチャレンジしてみたい、その世界で第一人者を目指したいと野望を持つ方が来てくださってもうれしいです。東京工科大学の強みでもあるICTやAI、VRなどは、今後、ますます医療やリハビリテーション分野で活用されるものですから、自宅からなかなか外出できない患者さんに簡単なモバイルを使って支援ができるツールなどの開発に挑戦したいという人も大歓迎です。人と細やかに関わること自体はコンピュータで代替できませんが、コンピュータができることと言語聴覚士ができることとを組み合わせて、多様でより良いサービスを患者さんに提供するような研究をしてみたいという学生の登場を期待しています!
 

医療保健学部 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻(2021年4月新設[申請中]):
https://www.teu.ac.jp/gakubu/medical/st/index.html