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「プロジェクトR」がロボコンでベスト4入り!“思考と試行のサイクル”を回してさらなる高みへ!

2022年1月14日掲出

工学部 機械工学科 上野祐樹 助教

工学部 機械工学科 上野祐樹 助教

2009年に“NHK学生ロボコン”に初出場した本学。その後、「プロジェクトR」として2016年から2021年まで、5大会連続で出場を果たしてきました(2020年は大会中止)。
そして、2021年10月に開催された大会では、遂に初のベスト4入りを達成。今回は「プロジェクトR」を率いる上野先生に、その概要と今大会を振り返ってのお話を伺いました。

■まずは工学部を中心に活動している「プロジェクトR」について教えてください。

 「プロジェクトR」とは、“NHK学生ロボコン”と国際大会である“ABUロボコン”での優勝を目指して活動する、学生主体のロボット開発プロジェクトのことです。本学の1年生から修士2年生までの学生が参加できます。現在は、工学部機械工学科の学生約40名で活動していますが、どの学部学科の学生も参加可能です。過去にはコンピュータサイエンス学部や工学部電気電子工学科の学生も一緒に活動していたことがあります。
 基本的な活動内容としては、例年、“NHK学生ロボコン”への出場に向けて、学生たちでロボット開発に挑んでいます。1年生には、毎年、前期に上級生が機械加工や設計、プログラミングについての講習会を実施します。その後、後期には大会に向けて進めている活動に関わってもらうという流れです。それ以外の学生は、大会出場に向けて、ロボット開発を続けています。
 また、機械工学科3年生後期の「機械創造応用」という実験の授業ともリンクしていて、一般テーマと挑戦テーマがあるうち、「プロジェクトR」に参加している学生は挑戦テーマを選択することになっています。というのもこのプロジェクトは、授業時間外で活動していることが多いため、この授業を1週間の活動報告や課題について話し合う時間としているのです。チームの中心となる3年生が受講するので、チーム運営に関するアドバイスをすることもあります。
 こうした取り組みを通して、学生たちはロボット開発に必要な機械設計や機械加工、電子回路設計・製作、プログラミングなどの知識や技術を身に付けていきます。またロボット開発はプロジェクトメンバー全員で取り組むため、学年の垣根を越えて協力し合いながら活動する中で、コミュニケーション能力やリーダーシップ能力を養うこともできます。
 

■先生はどういう形で関わるのですか?

 このプロジェクト自体、学生主体のものですから、教員は基本、見守るという立場です。ただ、どうしても学生だけでは解決できない技術的な問題が出てくることもあるため、そういう困りごとのサポートやアドバイスはしています。
 もともと2017年にこのプロジェクトが始まったときから、教員である私がいなくなってもチームとして回るようにということを考えて、進めてきました。その結果、今は学生たちだけで進めていくことができています。
 

■“NHK学生ロボコン2021”では初のベスト4入りという結果でした。今大会を振り返って、学生たちが苦労していたことや率直な感想をお聞かせください。

 今年の大会は、中国の遊び「投壺(トゥーフー)」がテーマで、ロボットがポット(壺)に矢を投げ入れることで得点を競うというものでした。例年は、ゴールまでの時間の速い方が勝つというタイムレース的なルールが多かったので、東京大学や豊橋技術科学大学といった技術的にも人員的にも豊かな、強豪チームが好結果を出してきました。しかし、今回はタイムレースではなく、完全な対戦形式です。ですからタイムレースに比べて、相手と自分たちの駆け引きという面が色濃く出てきます。その点、私たちのチームは、そういう部分が得意分野だったので、勝機はあると考えていました。
 学生が特に苦労していたのは、ロボットが矢を投げ入れるときの精度です。ルールが発表された昨年の9月頃から今年の4月頃までは、ローラーをモーターで回転させて、そこに矢を挟んで飛ばすという方法で進めていたのですが、着地点がバラバラで、なかなか精度が出ませんでした。その様子を見て、私からも「他に何か良いアイデアはないかな?」と問いかけをしていて。学生たちもローラーで進めるのは難しいという問題意識を持つようになり、色々なアイデアを出す中で、空気圧を使って矢を飛ばすという方法を見つけました。その方法を試してみて、うまくいったので、5~7月頃には完全にそれに切り替えました。
  ただ、矢をポットに投げ入れるということは試行錯誤をずっと続けてきたものの、そう簡単ではないということが途中でわかりました。強豪チームは全部のポットに矢を入れることができると思いますが、自分たちにはそこまでの技術はまだなく、活動制限もあったため大会までに十分な性能を達成することは難しいと判断して、それでも勝てるようにと戦略を色々と考えて、大会に挑んだのです。具体的には、遠いところや難しいところにあるポットは狙わず、近いところのポットにしか矢を入れないと決めました。ルールでは、グレートビクトリー(GV)といって、全部のポットに矢を2本ずつ入れたら、そこで勝利が決定するというものもあったのですが、私たちは最初からそれを狙いませんでした。逆にGVを狙ってくるチームには、それを阻止できるようなロボットの動きを考えました。早い段階で矢を飛ばす方式をローラーから空気圧に切り替えたこともあり、矢を飛ばす精度が上がり、こうした戦略も取れるようになって、今回の結果が残せたのだろうと思います。
 それから今年はチームワークがかなり良かったということも利点でした。特に今の2年生は、コロナ禍の昨年度、1年生として入学してきたこともあり、サークルなどがまともに活動できていない中、たまたま「プロジェクトR」の活動は行われていたことから、このプロジェクトに参加した人が多いのです。そういう経緯もあって、メンバー同士のコミュニケーションがかなり活発で、そのあたりがうまく作用してチームワークにつながったのだろうと思います。また、ポジティブな学生が多かったので、楽しみながら取り組めたことも結果につながったと思っています。

■今回、開発したロボットで工夫した点やこだわったところはありますか?

 実は毎年、他大学がしないような、何かしらユニークなものを盛り込もうと言っています。21年度の大会で言えば、まずは空気で矢を飛ばすという方法がそのひとつです。他大学でも空気圧を使って矢を飛ばすことを検討したチームがあったようですが、矢の中に空気を送り込むために棒を挿すのが難しいと判断し、断念したという話を聞きました。大会で空気圧を使って矢を飛ばしていたチームもいましたが、スタート時にあらかじめ矢を装填しておける場面でしか利用されていなかったようで、かつ精度も本チームに比べると低かったように思います。
  また、矢を補充するときの方法も、他チームとは違いを出しました。もともと補充の矢は5本、立てた状態で並べられていたので、ほとんどのチームは立てたままの矢をそのまま回収していました。ですが私たちは、立っている矢を一度手前に倒して、自分たちのロボットの中に取り込むことをしたのです。立ったままの矢を取ろうとして、少しでも位置がずれると、矢が倒れて落下してしまいます。そこを逆手にとって、倒れやすい矢をあえて倒して、ロボットの中にそれらをしまいこみ、回収するという形にしました。またこの方法は、矢の中に空気を送り込む棒を挿入するうえでも都合が良かったのです。そういう方法を採用していたのは、本学だけです。この2点がうまくかみ合って、精度の高い射出ができたと感じています。

■今後の課題と2022年度大会への抱負をお聞かせください。

 他大学の強いチームと比較して、もちろん技術的にまだ足りていないところはあります。ですがそれ以上に、うちのチームに足りないものは、考えて手を動かすサイクルのスピード、回数だと思っています。ですから学生には常々、「思考と試行のサイクルを早く回していこう」と言っています。考える“思考”と、実際に手を動かしてみる“試行”のサイクルをとにかく回さないと強いチームには勝てません。本学の学生は、割とじっくり考えて動くタイプの人が多いように見受けられます。しっかり考える分、確かに良いものがつくれるのですが、その間に、他のチームはどんどん「思考と試行」を繰り返して、より良いものをつくっています。ですから、本学の学生たちの思考の質は保ったまま、手を動かすというサイクルを早く回して、思考と試行のスピードをさらに上げれば、当然、もっと良いものができるはずです。そういうところを意識して改善していきたいですね。

 現在は、少し前に2022年度大会のテーマとルールが発表されたので、試作と実験を繰り返して得た結果を踏まえて、ようやく、どういうロボットをつくるかというアイデアが固まりつつあるところです。22年度のテーマは、対戦相手が絡んでくるところもありますが、基本的にはタイムレース形式で時間勝負になるため、他のチームが技術でカバーしてくる分、本学はアイデアでカバーできればと考えています。また、今年、ベスト4という好結果が得られたのは、他のチームがコロナ禍で活動時間がいつもより少なかったという影響もあると思います。来年以降、他のチームも力をつけて戻ってくると思うので、厳しい戦いになると予想しています。
 目標としては、もともと2021年はベスト8、つまり予選リーグの突破を目指していて、2022年はベスト4、その次の年から優勝を目指そうと考えていたので、今年はたまたま当初の目標より良い結果が出たという感じです。ですから来年度は予定通り、ベスト4を目指していこうと思っています。そしてこの後、ベスト4に入れる実力を維持し続けることができれば、その先は相手のミスや偶然うまくいくといった、ちょっとしたことで優勝できる可能性がかなり高くなると考えています。ですから、目標としてはベスト4以上をキープしていきたいですね。

■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 「プロジェクトR」には、最初からロボットに興味を持って入ってくる学生は、それほど多くありません。逆に「なんとなく機械を使ってみたい」とか「プログラミングをしてみたい」といった小さなきっかけで参加している人が多いのです。そういう人が活動を続けるうちに、少しずつ技術や知識を身に付けていき、自分の知らない世界が広がって、さらにもっと先へ進むにはどうしたら良いかと好奇心がどんどん強くなり、時間を忘れるほど活動に没頭していくようになります。実際に自分でチャレンジしてみて、その面白さを知る人が多いのです。
 ロボットを動かすには、色々な要素が複合的に関わっているので、誰でもきっと興味の持てる部分があるはずです。何かしら興味がある人は、ぜひ参加してみてください。もちろん、工学部機械工学科に限らず、他学部他学科の学生も大歓迎です。特にプログラミングや回路に関して、機械工学科の学生のみでは知識が足りない部分も多いので、そのあたりが得意な学生に参加してもらい、一緒に活動していけたら理想的だと思います。

■工学部 機械工学科WEB:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/eng/me.html