広告コミュニケーションから学んで活かそう

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広告コミュニケーションから学んで活かそう

■広告を学ぶことは、時代のコミュニケーションを学ぶこと

 今やインターネットやソーシャルメディア、SNSの存在は、みなさんの日常の一部になっていることと思います。YouTubeやツイッター、インスタグラム、LINEなどに触れない日はないのではないでしょうか。こうしたメディアやプラットフォームの発展は、世界的な規模で広告業界に大きな変革をもたらしました。中でも注目されているのがクチコミのパワーや影響力です。誰でも自由に情報発信できる時代になり、生活者どうしが気軽に情報交換する時代です。今や一般の生活者が発信した情報が、あっという間に世界中の人に共有される時代になっているのです。こうした情報変革の時代を迎え、広告の信頼度は下がり、逆にクチコミの重要度が上がっています。
 この状況に対応するため、広告業界は今や広告を制作するだけではなく、SNSを活用したマーケティング・コミュニケーションやプロモーションに力を入れています。インフルエンサーや、YouTuber、インスタグラマーとのコラボレーションも行っています。企業や商品のファンを重視したファン・マーケティングや、自社のファンと一緒に活動を行うアンバサダー・プログラムにも注目が集まっています。一般に知られていませんが、商品開発や街づくり、地域活性化、社会貢献なども広告業界の活動分野になっています。
 ネットやデジタルが当たり前になった現在、広告は従来の概念を大きく超えています。現代の広告は、広告という手段を使った企業からのコミュニケーションです。広告は、企業の課題をコミュニケーションの視点から解決する方法論のひとつなのです。従って、広告を学ぶことは、企業から生活者へ向けたコミュニケーションに関する総合的な技術を学ぶことにつながるのです。
 広告は常に時代に即したメディアを活用するという特徴があります。広告を考えることは、変化する時代を考えることです。その意味で、21世紀の広告コミュニケーションは、SNSやソーシャルメディア、そして情報を発信する人たちの存在を抜きにしては考えられません。

■これからを考えるためには、これまでを知ることが大切です

 例えばみなさんは、YouTubeの動画を日常的に楽しんでいることと思います。またツイッターで、友人が共有した動画を楽しむことも多いと思います。みなさん自身も、今までにおもしろ動画をシェアしたり、「いいね」ボタンを押した経験があるのではないでしょうか?では、こうした動画の楽しみ方は、いつ頃始まったのでしょうか。
 ネット上やSNS上でシェアされる動画の歴史を知ることは大変勉強になります。新しいメディアが生まれるごとに、先人たちは新しい挑戦を行い、それらが起点となって、さらなる可能性が次々と広がってきたのです。そうした経緯や進化の流れを知ると、メディアと広告の関係にきちんとした節目があることに気づきます。
 今のみなさんの日常は、そうした、いわば歴史的な流れの現在型にあたります。そこには過去から続く潮流があり、今後に活かせるヒントが数多く隠れているのです。これはよく考えれば当たり前ですが、意識しないとなかなか見えてこない真実です。
 ネット上の動画広告の変遷を簡単にご説明すると次になります。一般的に「インターネット普及開始期」は1995年から2000年頃と言われています。メディア学部の発足は1999年ですので、ちょうどネットの普及開始期にあたります。今となっては信じられないかも知れませんが、ネット普及前夜は、まだまだネットそのものに危ないイメージがありました。まだ完全に市民権を得ない、ちょっと怖い存在だったのです。そうした時期の1997年、ネット上に、世界初のバイラルCMとされる約26秒の「Bad Day Man destroys computer」が公開されます。このバイラルCMは長らく世界中で大きな話題となります。私も当時、海外に住む友人からメールで教えてもらいました。この動画は現在でもYouTubeで視聴できますが、YouTubeの誕生じたい2005年という点には注意が必要です。YouTube誕生以前から、こうした動画が今と違うカタチで世界中で視聴されて話題になっていたのです。
 こうしたCMはバイラルCMと呼ばれ、2001年頃から欧米、特にイギリスで数多く制作されました。バイラルCMに最初に着目したのはゲーム会社です。各ゲーム会社は、テレビではオンエアできない過激な内容のバイラルCMを次々と作り、世界中の話題になっていきます。そして2005年のYouTube誕生、2006年のツイッター誕生により、バイラルCMは次第に市民権を得て、ついにメジャー企業が進出します。そして過激な内容から、ドラマチックで心揺さぶる内容や、社会への問題提起、感動的で何度も見たくなる内容へと変化していきます。そしてついに世界最高峰の広告賞、カンヌ・ライオンズのサイバー部門やフイルム部門でグランプリを受賞するまでに進化するのです。そんな歴史や経緯があり、インスタグラムやLINEが誕生し、今のみなさんの日常につながっていくのです。詳しくは私の授業でお伝えしますので、この記事ではここまでです。
 ちなみに、授業で学生から「最近、若者の間でバズるという言葉が流行っています」という話を聞くことがあります。バズるという言葉はBUZZから来ていますが、BUZZというキーワードは最近、流行っている言葉ではなく、古くから使われている広告業界の専門用語です。もちろん、先ほどお伝えした1997年のバイラルCMの際もBUZZというキーワードは使われていました。こういうことをひとつずつ紐解いていくことが勉強につながり、知識を力に変えるのです。

■重要なのはデジタル時代のコミュニケーションを考えること

 デジタルの進化が、あらゆるコミュニケーションの形を変えています。インターネットやSNSの発展、通信技術やデバイスの進化も見逃せません。ARやVRによる広告の新しい可能性も拡がっています。今後もデジタルやテクノロジーの発展により、広告コミュニケーションの可能性はさらに広がっていくことでしょう。
 一方、その際に忘れてはいけないことがあります。それは、技術の進化に比べて人間というもの、特に人の気持ちや心理は、そう大きく変わらないという点です。そもそも、全ての物事の中心に人間がいるという視点は重要です。人間を重視するデジタルやテクノロジーでなければ、生活者に受け入れてもらい、人に寄り添うことはできないでしょう。その点を踏まえ、今後の広告コミュニケーションで重要なのは、デジタルそのものを考えることではなく、デジタル・シフトした時代のコミュニケーションを考えることだと言われています。
 広告の目的は、コミュニケーションの力で物事や企業を前進させ、発展させることです。そして、広告コミュニケーションの本質は、人の気持ちを動かすことです。そのために、広告分野には、世界中の広告人たちによる知見や知恵、才能や技術やアイディアが結集しています。
 一般に知られていませんが、クリエイティブに関わる全ての職種が広告業界と関係があります。広告業界はみなさんが思っていらっしゃる以上に、業界としての大きさと裾野の拡がりがあるのです。この分野には本当に多様な職種があります。コピーライターやデザイナー、プランナーやマーケター、映像ディレクター、音楽プロデューサー、Webディレクター、Webプランナー、CGデザイナー、イベント・プランナー、メディア・プランナーや、映像エディター、テクニカル・ディレクター、テクノロジストといった人たち…。広告分野の仕事の多くは職種を超えた協業、チームワークで行われます。そして、新しい時代を切り開くための挑戦が世界中で行われています。
 人に寄り添い、エンゲージメントを築き、人の気持ちを動かすためにはどうしたら良いのか。企業や社会を未来へ導くためには、何を行ったら良いのか。デジタルやテクノロジーが進展すればするほど、コミュニケーションによって課題解決を担う広告にできることはさらに拡がるはずです。

■高校生の皆さんへ

 この記事を読んでいる方々は、クリエイティブなことに興味がある人が多いと思います。メディア学部にはそうした方々に向けたさまざまなカリキュラムが用意されていますので、多角的な学びを得ることができます。
 その際、私が大事にしていただきたいのは、物事の「考え方」を学ぶ重要性です。例えば、一般的にクリエイティブなことには才能やセンスが必要だと思われています。しかし、才能やセンスより、もっと大事なことがあります。それは、物事をどのように考えるのか、といった「考え方」です。考え方ひとつで全てが変わってきます。何を伝えたら人の気持ちを動かすことができるのか、何を行えば課題が解決するのかなど、物事をどのように考えるのかはとても重要です。
 例えば、一般的に表現を重視すると思われている広告制作でも、「What to say(何を言うか=何を描くか)」と「How to say(どう言うか=どのように描くか)」を分けて考えます。そして前者(メッセージの内容)を決めるために、多くの時間を使います。それはメッセージの内容を決めてから、どう描くのかに取りかからないと、中心のないコミュニケーションになってしまうからです。
 大学生の期間は社会に出るための準備期間、練習期間だと考えることができます。前進するためには試行錯誤が必要です。一緒に悩んで成長していきましょう。

このWebページでは、メディア社会コースの藤崎 実先生にお話をうかがいました。

教員プロフィール
メディア社会コース 藤崎 実 講師

■国内広告会社として、博報堂宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社。外資系広告会社として、TBWA\HAKUHODO。ソーシャル・メディアのマーケティング会社として、アジャイルメディア・ネットワーク。それぞれの仕事に従事した後、東京工科大学メディア学部へ着任。東京コピーライターズクラブ会員/TCC30Th会員。世界三大広告賞(カンヌ、OneShow、クリオ)。NYフェスティバル、reddot賞、iF賞、クリエイターオブザイヤー、Webクリエーション・アウォードWeb人賞など。
変わりゆく時代とメディアの最前線を歩み、先駆的な広告コミュニケーションに取り組んできました。何事も経験だと考えて、積極的に自分を動かしてきた結果、幅広い経験と、尊敬できる人たちとの出会いを得ることができました。
私の原点は10歳の時です。その時に出会ったあるマンガの影響で将来は表現に関わる人になりたいと思いました。次第にSF少年、サッカー青年、映画青年に。高校生の時に映画人と接点を持つようになり、巨匠と呼ばれる監督たちと交流を持つようになりました。その頃の学びが、私の原点かも知れません。広告業界で働くようになってからも、要所、要所で多くの師匠に出会い、今に至ります。